『雨』 詩:北原白秋 少女画 『幼き友』 画:須藤しげる
2008年 11月 19日
遊びにゆきたし、傘はなし、
紅緒の木履も緒が切れた。
雨がふります。 雨がふる。
いやでもお家で遊びましょう、
千代紙折りましょう、たたみましょう。
雨がふります。 雨がふる。
けんけん小雉子が今啼いた、
小雉子も寒かろ、寂しかろ。
雨がふります。 雨がふる。
お人形寝かせどまだ止まぬ。
お線香花火もみな焚いた。
★明治から昭和を生きた北原白秋は詩人でもあり、童謡作家でもあったお方。”雨”をうたったものがいくつもあるけれど、この『雨』(大正7年)は知らないうちに口ずさめる。母が歌っていたのだろうか...私は”雨”が好き。”ええ~!”と想われるお方ほど健康的ではないのかもしれない。そのうえ、わがままなことに雨の日の外出は嫌い。お家の中で遊んだり、窓の外の雨模様を見つめたり、雨の音を聞いたりするのが子供の頃からとても好きだった...今もそう。真夜中の雨、早朝の雨は特に好きで心が落ち着く。この詩の中の少女を想う。なんと愛らしいのだろう!
下の絵は須藤しげる画で『幼き友』(1929年・昭和4年)と題された作品。これまた、小さなお人形をおんぶしてまるで我が子のような少女。お履もきちんと揃えてお遊びしている少女たち。幼き日に”おままごと”や”お人形あそび”が好きだった私にはこの小さな少女が懐かしいようで、また愛おしい。一枚の童画、一曲の歌なれど。私はお仕事上、洋楽(英語やフランス語やドイツ語が多い、それも風変わりな曲を好む傾向強し)を聴く毎日なのだけれど、ふと、こうした古い日本の世界を求めてしまう。お陰で、不安定がちな心のバランスを保つことができるのかもしれない。