『噂の二人』 二人の女性教師カレンとマーサ、そして、少女メアリーとロザリー♪
2008年 06月 12日
名誉棄損の裁判も(マーサの叔母の証言が得られず)負けてしまう。新聞にも書き立てられすっかり二人は人々の噂、好奇の眼差しの対象になる。婚約者のジョーは二人を大切に想ってはいるものの、心のどこかに二人の仲を疑っている心、それが哀しいカレンは彼と別れる決意をする。マーサは少女たちの嘘から自分の気持ちがまざまざと湧き上がる。カレンにその気持ちを打ち明ける”愛しているのよ”と。カレンは驚くが彼女たちの絆は深い。でも、外に出れば見世物のように野次馬たちが一目見ようと待っているので外出もできない。ジョーと別れることをマーサにカレンは伝えるとマーサは自分を責める、”汚らわしい”と。カレンは二人で再出発しようと決めている。カレンが少し外を散歩している時にマーサは鍵を閉め部屋で自殺してしまう...マーサの葬儀に、カレンは”マーサ、決して忘れないわ”とお花を摘み人々が遠目にいる中を、涙を湛えながらも昂然と少し微笑みも浮かべ顔を上げて歩いてゆく...かなり重いけれど秀作☆
オードリーの出演シーンの方が多いけれど、オードリーよりも少し実年齢の若いシャーリー・マクレーンは、やっぱり此処でも素晴らしい!!じわじわと切々と伝わるこの難しい役を演じている。でも、後にシャーリー・マクレーンはこの当時、画期的な役柄を与えられもっと深く表現できるチャンスだったのに、よく理解できずにいた(マーサや同性愛の葛藤の心理など)とご自分の演技に納得されていないような発言をされていた。誠実なお方だとその時も感動した。そして、さらにこの女優さまが好きになっていた。今もご健在なのも嬉しい!
※このお話は、エジンバラで実際に起きた事件からリリアン・ヘルマンの戯曲が書かれ、映画化される以前に舞台劇として好評を博したものでもあるそうだ。このエジンバラの事件のことも、もう少し知りたいと想う...。
(追記)
★1930年代に舞台劇として大好評だったというものの映画化。その舞台を知らないけれど、表現はどこまで許されたのだろうか...とふと疑問が過ぎる。最初の映画化に当り、監督はタイトルを『この三人』と変えている。色々な検閲からの要請があったようだ。脚本は原作のリリアン・ヘルマンが担当している。”この三人”とは女教師で親友のカレンとマーサとカレンの婚約者のジョー。カレンとマーサがジョーを巡って...という内容にお話も変えられている。1936年という時代に同性愛は禁断でありタブーであったのだろうから仕方がない。ウィリアム・ワイラー監督はそれでも、25年もの年月を経て原題と同じタイトルでこのタブーを描いた。監督はカレンとマーサの窮地に追い込まれてゆく様子、世間の眼差し、子供たちの嘘(少女メアリーもこんな大事になるとは想ってはいなかったのだろうけれど)...それらの人間の繊細な心を描きながら問うようでもある。”人間の尊厳”とは?!また、”愛”とは?!と。尊い信念や気持ちに邪な偏見で揶揄される人々。リリアン・ヘルマンというと”赤狩り”時代にブラックリストにも登録されている左翼運動家のお一人である。彼女の優れた戯曲(作品)たちは多くの映画で知ることが出来て嬉しい。リリアン・ヘルマンの出世作ともなったこの『子供たちの時間』を書くように奨めたのは長年の相棒でもあったハードボイルド作家のダシール・ハメットだそうだ。英国のエジンバラで実際に女性教師が同性愛者のために学校が閉鎖されてしまったという事件をハメットが知り、その人間の尊厳や屈折した心理に興味を抱いたのだろうか...。この事件については私は全く知らない。1930年代、1960年...2008年の現在の時間の流れ。今でもまだまだ偏見はある。いつも想う。何故、人が人を愛する気持ちに”汚らわしさ”を感じるのだろうか。女性が女性を、女性が男性を、男性が男性を...その気持ちの何が?と。
可憐なオードリーは此処でも凛として素敵だ。でも、後半切々と胸に響くマーサの気持ち、それを演じたシャーリー・マクレーンの演技は感動的だった!!共に素晴らしい女優さま♪
噂の二人/THE CHILDREN'S HOUR
1961年・アメリカ映画
監督:ウィリアム・ワイラー 原作:リリアン・ヘルマン 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影:フランツ・プラナー 出演:オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンス、フェイ・ベインター、ヴェロニカ・カートライト、カレン・バルキン