『白のシンフォニーNo.2 白衣の少女』 或いは 『団扇を持った白い服の娘』 ホイッスラー (1864年)
2011年 10月 31日
★『白のシンフォニーNo.2 白衣の少女』或いは『団扇を持った白い服の娘』或いは『白い少女』と題された、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの「白のシンフォニー」の第二作で1864年の作品。ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler:1834年7月10日~1903年7月17日)は、19世紀末を代表するアメリカ人の画家ながら、パリで美術を学び、画家としては大半をロンドンで過ごしているので英国画家であるとも思います。この絵画はテート・ギャラリーに所蔵され、ラファエル前派の動きとも呼応します(ラスキンとの論争も長きに渡る)。けれど、美術史の中の位置づけは印象派及び印象主義、耽美主義に属します。さらに、このホイッスラーの絵画を鑑賞して感じるあの感傷的な雰囲気、正しくヨーロッパの憂愁なのです。ホイッスラーの父親はオランダ人だそうですが、土木技師であった為、鉄道建設の仕事でロシアに赴く。その後、イギリス、アメリアと渡り、フランスに移住という流民の人であった。そうした父の人生とホイッスラーの人生が重なり合う、鏡のようでもあります。
この『白のシンフォニー』の頃は「白の時代」で、当時の英国はヴィクトリア朝時代なのでジャポニスムの影響も絵の中に表れています。物憂い少女の面持ちと柔らかなモスリン風の白い衣服に団扇を持ち、朱色の碗も見られます。全体を包む白のイメージは、私の好きなロマン主義的な感傷へと誘います。ホイッスラーはとても音楽を好んだ画家のお一人で、やはりロマン派を愛好されていたように何かで読んだことがあります。アメリカ人ながら異邦人のようなホイッスラーは、複雑怪奇な脈々と流れる長いヨーロッパの歴史、芳香を受け、汲み込みながら作品に投影されていたように思います。この絵の「白い少女」の憂いと倦怠のようなもの、そして全体の構図としての穏やかな調和は、やはり私には「音楽」あるいは「詩」を奏でる作品です。ホイッスラーの心にはそうした心の音楽、心の詩が流れていたのでしょう。優美で大好きです。