あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『ベント 堕ちた饗宴』監督ショーン・マサイアス主題歌ミック・ジャガー音楽フィリップ・グラス(1997年)

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★マーティン・シャーマンの原作戯曲の舞台劇の初演は1979年。ブロードウェイでも上演され、リチャード・ギアがマックスを演じたものもあるそうだ。日本でも役所広司主演の舞台もあったという。この戯曲が『ベント 堕ちた饗宴』(邦題)として映画化されたのは1997年。マックスを演じるのは今ではハリウッド映画でも大活躍のクライヴ・オーウェンで、彼の主役映画で一等好きな作品。ダンサーのブライアン・ウェバーが収容所送りの貨車内で拷問のうえ死んでしまう場面は辛かった。眼鏡はインテリの印だとゲシュタポは踏み壊す。その将校は眼鏡をかけていた。

この映画は歴史を伝えながら静かに訴えかける。静か故に切々と悪夢の歴史とその犠牲者たちの死を無駄にしてはならないのではと悲痛な想いを抱く。このような題材の映画がハッピーエンドなはずは無い。悲しくて泣いてしまうけれど美しい!ゲシュタポ内にもゲイの将校は存在したのではなかったか!マックスがゲシュタポと取引(生き延びるために)しゲイの印であるピンク・トライアングルではなく、ユダヤの黄色の星を胸につける。ホルスト(ロテール・ブリュトー)はゲイとして生き延びたいと願っている。彼の誠実さと勇気に感動する場面がいくつかある。中でも、終盤、射殺される前にマックスに背を向けて歩き出す中で、愛のメッセージである眉を掻く。それはマックスの心にしっかりと届いたのだと想う。無意味な作業、重労働を課され真夏も真冬も12時間。2時間に一度の休憩時も座ることは許されない。マックスとホルストは岩を運びながら会話を密かにする。見つめ合って話すことも、体を触れ合うことも許されない。すべて監視されている。二人は休憩時間にお互い横に並び言葉と想像で愛を交わす。こんな最悪の状況下でも愛は存在するのだ!そんな美しさに私は胸を打たれる。けれど、同時にやるせない想いも募りヘヴィでもある。
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この美しくも重い映画を4回観た。観終えたあと、暫く何もできないのだけれど。理由はミーハー故のこと。序盤にミック・ジャガーが女装して歌う場面と僅かな台詞がある。ミックが好きなのでその場面は嬉しい。また、マックスの叔父役でイアン・マッケランも少し登場される。豪華な序盤である。エンドロールでもミックの歌が聴ける。そのキャストを眺めていると、ジュード・ロウとポール・ベタニーの名があった。ほとんど、クライヴ・オーウェンとロテール・ブリュトーがメイン。私はジュード・ロウが好きなのにどこに出演されていたのか分からず。そこで、確認するために再見した。ほんの僅かながらあの少年のような輝く瞳は間違いなくジュード・ロウであった。ポール・ベタニーは何となく検討がついていた。将校の大尉役だった。あまり大写しのアップはなかった。そして、また後に、ルパート・グレイヴスも出演と知り再見...こんな理由で幾度もヘヴィな気分となりながらも、常に感動して涙に溢れる私はなんだろう...。英国は美少年・美青年の宝庫であるのは随分前から変わらないので嬉しい。

この映画はピンク・トライアングルというテーマが主。収容所内で作業着に付ける印のこと。政治犯は赤の三角、ユダヤは黄色の星、同性愛者はピンクの三角。この順序であるので、ピンク・トライアングルは最低ということなのだ。片っ端から相殺されてゆくので、ミック演じるグレタはジョージと名を変える。マックスの叔父は長年隠れゲイの生活を続けている。皆、生き延びるための手段。その選択を非難することはできない。ミックの歌う曲も好きだけれど、全編を流れるフィリップ・グラスの音楽がとても素晴らしい!映像と一体化して、優れた俳優の演技と共に芸術となる。そして、観る者はそれぞれの想いを抱き思考する。ゲイという言葉(劇中の字幕はホモとある)やそれらの人々に対して邪な偏見を持たれているお方はやはりまだまだ多い。なぜだろう...愛することは人間の権利である。美輪明宏さまのお歌にもあるように!意図して同性を愛するのではない。好きになった人が同性だったということ。どうして?と人は訊くけれど、当の本人たちはその答えを持っていないのではないだろうか。好きだからという理由に男女の境界が必要ではない。人が人を愛するのだから。そんな当たり前のことなのに。日本の同性愛の歴史はとても古くからあることなのに。日陰者の想いを抱きながらの日々なんて。何の罪でもないのに。犯罪でもないのに、最低のピンク・トライアングルを付けられ死へ追いやられた多くの犠牲者たち。ユダヤ人の虐殺のお話は学校でも習うけれど、こうした史実も伝えてゆくべきだとも想う。
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ベント 堕ちた饗宴/BENT
1997年・イギリス映画
監督:ショーン・マサイアス 原作戯曲・脚本:マーティン・シャーマン 
撮影:ヨルゴス・アルヴァニティス 音楽:フィリップ・グラス
出演:クライヴ・オーウェン、ロテール・ブリュトー、ブライアン・ウェバー、ミック・ジャガー、イアン・マッケラン、ニコライ・ワルドー、ジュード・ロウ、ポール・ベタニー、ルパート・グレイヴス

【あらすじ】舞台は官能に満ちた饗宴が繰り広げられるベルリンのクラブ。そこで働くマックス(クライヴ・オーウェン)は、綺麗な金髪の青年ウルフ(ニコライ・ワルドー)と一晩過ごした翌朝、同棲相手のダンサーであるルディ(ブライアン・ウェバー)の嫉妬の視線にさらされる。それを親衛隊の激しい靴音とドアのノックが打ち破る。ウルフはナイフで刺殺されるが、マックスとルディは間一髪アパートを脱出する。2人はグレタ(ミック・ジャガー)に助けを求めるが、彼はジョージと名前を変え、ゲイの生活を清算していた。そしてヒトラーの命により同性愛者は殺されることを知らされる。2人は各地を転々と逃げ回る。マックスの叔父(サー・イアン・マッケラン)がアムステルダム行の切符とパスポートを1人分だけ用意してくれるが、マックスは2人でなければ駄目だとこれを断る。ある晩、森の中でゲシュタポに捕えられ収容所送りになる。インテリの象徴である眼鏡をかけていたルディは列車の中で拷問される。マックスは助けようとするが、ホルスト(ロテール・ブリュトー)という同乗者に止められ、現実ではないと自らに言い聞かすことでルディを見殺しにする。マックスは人間としての尊厳を捨て、生き延びるために取り引きしようと決意する。ゲシュタポに13歳のユダヤの少女(死体)と関係を持つ。ゲイでないことを証明しろと言われ、これに応じ、ピンクの三角(最下位の同性愛者であることを示す)ではなく、黄色のダビデの星を手に入れる。収容所に着いて、マックスが手にした仕事は石を運び、積み上げるとそれを元の場所に戻すという単純作業で、それもゲシュタポと取り引きしたものだった。さらにマックスはホルストを相棒に呼ぶ。2人は互いに見つめあうことも触れあうこともできないが、言葉だけで愛を交わしあう。季節が猛暑から雪の積もる酷寒へと移り変わり、ホルストは咳をするようになり、彼の体力も気力も衰えていった。ホルストのためにマックスは新任の将校に近づき薬を手にするが、翌朝そのことが発覚し、ホルストは銃殺される。マックスはホルストの遺体からピンクの三角の付いた囚人服を脱がせ、自らの意志でそれを着て電気の流れる有刺鉄線につかまるのであった。
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by claranomori | 2009-09-27 10:30 | 文学と映画★文芸・史劇