あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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 時々云っているかもしれないけれど、私は「岩波文庫」が大好き!初めて手にしたのは中学生の頃だけれど、それ以前にも岩波ジュニア新書という児童文学等の優れた作品群があるので、総じて子供時代から「読書は岩波育ち」と断言できる。梅田の紀伊国屋書店での購入が最も多く、当時は先ず岩波文庫のコーナーに向かった。今はデザインが新装されているけれど、あのベージュのシンプルなデザインと質感が好きで、今もやはり愛着がある。お友達と一緒に書店に行くと、岩波文庫を買うのは私だけだった。仲の良かった級友は当時人気だったコバルト文庫ものをいつも買っていた。私は岩波文庫の次に好きだったのは新潮文庫。高校生後半から白水社のUブックスを知り20代までに網羅は出来ていないけれどかなり読んだ。とても愉しい本との想い出。

 3月11日から3ヶ月以上を経過して遂に猛暑到来の季節になった。多くの方がこの東日本大震災でお亡くなりになり、多くのものが失われてしまった。その上、原発事故で命ある者までも不安な状態で、これは日本だけの問題ではないのでかなり深刻なこと。総理や東電の会見や責める声、反原発、脱原発、推進派の人々の様々な意見が毎日ニュースで賑わう。けれど、今も瓦礫は積まれ避難所生活の人々、全壊した家屋から新たな一歩を踏み出し始めた人々、放射能の危険にさらされながら作業されている人々...この大災害から助かった命ある人々を想う。家族を失った方も多いけれど、それでも生きて行かなければならない。漁業が出来なくなったから農業を始めるという60代の女性の姿をニュースで知った。60代になって今までまったく経験のないお仕事を始める。穏やかな語りのその女性はあまりにも強靭で尊い姿として私は涙が出てしまった。私にはそんな強さはないだろうから...。

 4月頃だったかな?『きけ わだつみのこえ』を読んだ。岩波文庫のワイド版で。私は数ある岩波文庫の中でこの『きけ わだつみのこえ』はなかなか読めずにいたもの。結局読んだけれど、やはり読んでいて辛いし、20歳前後の若き命、ただ一度だけの青春時代という時間を戦争に捧げるのだと想うと。でも、編集顧問の東大教授でフランス文学者の渡辺一夫氏による序文の中の詩がおぼろげに残っていたもので、再読ではっきりしてメモに取っておいた。4月頃のブログで書こうかと思いながら何となく戸惑いもあり今日になってしまった。その詩はフランスのレジスタンス詩人であるジャン・タルジューが、1943年の『詩人の光栄』という詩集に収められていたものだそうだ。ジャン・タルジューのこの詩は第二次世界大戦中に刊行されたというのも驚く。フランスは連合軍ながらアメリカやイギリス軍とは違って、ドイツとはかなり激しい戦いがあり、ナチスの占領下の時期も経ての勝利国というなんとも複雑な重い歴史を抱えている。ゆえに、その時代を描いた映画も多く今も作られ続けるのだろう。レジスタンスに身を投じ若き命を失った人たちは世界中にどのくらいおられるだろう。戦争なんて必要ないと想うのに太古の昔から今日も果てしなく続いている。私はガンジーを尊敬しているので反戦云々とも少し違う。日本がこの大震災に遭った時、フランスとイギリス(アメリカも)はリビア戦が過熱していた。ヨーロッパの闘いの歴史もまた凄まじいものでかなり複雑怪奇...学びと思考の日々は続く。

死んだ人々は、還ってこない以上、
 生き残った人々は、何が判ればいい?

 死んだ人々には、慨く術もない以上、
 生き残った人々は、誰のこと、何を、慨いたらいい?

 死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
 生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?

 詩:ジャン・タルジュー 訳:渡辺一夫 1949年8月31日

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※「わだつみ」とは「わたつみ」、「海神」という意味の古語だそうですので、なんとも・・・。また、未見なのですが映画化もされているそうです。
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by claranomori | 2011-06-28 09:42 | 想い・鑑賞・読書メモ
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★フランス屈指の独特の映像美でダーク・ファンタジーの世界を映画くジャン=ピエール・ジュネ監督。『デリカテッセン』(1991年)で知ったのだけれど、より感動した作品は1995年の『ロスト・チルドレン』。ジャン=ピエール・ジュネ監督映画の最大のヒット作は2001年の『アメリ』なのだろうけれど、やはり印象強く焼きついている作品というとこの『ロスト・チルドレン』。

 最近は古い日本の映画を多く観ていて、まだ復興もままならぬ東日本大震災の傷痕を想う日々。まったくの個人的な気持ちなのだけれど、以前から心捉われるものの一つであった「戦争」というもの、敗戦後の日本を想う。戦争を知らない子供であり、バブル期に思春期を過ごした私がである。私の亡き両親は戦後、少年少女時代を過ごした世代。聞かせてくれた僅かなその当時のお話、その頃を舞台にした映画や文学...。今もまだその時代を体験した人々が多く生きておられる。想像することしか私には出来ないけれど、それは壮絶な凄まじいものだっただろう。けれど、焼け野原の日本は躍進して経済大国に。その過程にはやはり技術や科学の発展、進歩ということを抜きには語れない気がする。その功罪を乏しい頭と心で考えているという日々です。不思議な記憶がこの『ロスト・チルドレン』を呼び戻したかのようで、二度目の鑑賞。当時は気付かなかったことがあまりにも多く、また感動した場面は変わりなく同じシーンで涙した。この映画に惹きつけられるのは「孤独」だろうか・・・。
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 お話は、近未来の港町。そこはどことなくネオ・ヴィクトリアンとでも云えるかのような不思議な雰囲気を醸し出している暗い町。見世物小屋やサーカス、そこに怪力男ワン(ロン・パールマン)がいる。その町では子供たちの失踪事件が起こっており、ワンの幼い弟ダンレー(ジョゼフ・ルシアン)も誘拐されていまう。ワンの弟(捨て子のダンレーを弟として育てている)探しが始まり謎の一つ目族の本拠に侵入、9歳の美少女ミエット(ジュディット・ヴィッテ)と出会い、彼らの危機と脱出までの冒険ファンタジーが描かれる。その中でワンと少女ミエットとの心の交流は重要なもので、ワンは見かけは怪男ながら心はとても優しく純粋。そんなワンに幼心に心惹かれる少女ミエット。けれど、このミエットは9歳の幼い少女ながらとても大人の女性のようでもある。不思議な魅力のミエットは孤児の泥棒団のリーダーのような存在で、この少年少女たちは孤児院にいる。その孤児院の経営者はシャム双生児の姉妹で絶対的な命令下にあり、ワンも一味に入れられる。一つ目族の本拠内の実験室にはクランク博士とクローン人間たち(すべてドミニク・ピノン)や水槽の脳イルヴィン(声だけながら名優ジャン=ルイ・トランティニャン)がいる。クランク博士の実験は狂気を増し、遂にはイルヴィンの脳と誘拐した2歳の幼い少年ダンレーを結合する実験を。
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 そんな狂気の中で創造物であるイルヴィンが子供たちを救うために海へメッセージを詰めたカプセルを流す。そのメッセージとは子供の夢を託した悪夢である。その海(船)には実はクランクをも創造した本当の博士(ドミニク・ピノン)が記憶を失って住んでいた。けれど、その海に流されたカプセルのお陰で博士も、捕えられたミエットも真相を知ることになる。ワンとミエットはダンレーを救うために実験室に侵入。その折にミエットの体にワンは自分の着ているセーターの糸を繋ぐ。ミエットは「私たちは結ばれたのね」と数少ない笑顔を見せる。ミエットはダンレーを救うために、自ら悪夢の中、眠りの中へ。愛するもののためには悪夢を見なければならないのである。そのテーマは色んなことに置き換えることが出来ると想う。「童話を愛した者は童話に復讐される」という処に私は今居るように感じていて、とても辛い。綺麗な夢溢れるおとぎの世界には悪夢が共に在る。それをも引き受けなければ愛する世界を放棄することになる...そんな気がしています。

 ミエットとワンの冒険の中で、ワンが姉妹に暗示をかけられミエットを殴る場面がある。ミエットは賢明な少女であるので知っている。けれど、その天使のような妹と想っているミエットをワンが殴らなければならない。その場面のミエットの涙。この場面がたまらなく大好き!そのミエットの眼差しが。結局、ミエットとワンたちの活躍でダンレーや孤児院の子供たち、博士に作られた者たちはその施設から脱出することができた。博士は実験室と共に滅びる。映画は彼らが暗い海を船を漕いでゆきながら終えるけれど、私に残された余韻は決してハッピーエンドでもない。あの子供たちは孤児である。いったい何処に行くのだろう、また何処からやって来たのだろうか。奇怪な世界、歪な世界があるからこそ、ファンタジーも生まれる。ファンタジーは悪夢をも内包することを受け止めないと夢の世界には行けない。夢をみる者には苛酷な試練なのだ。そう云えば、オープニングから途中も鏡の歪んだような映像がある。それはルイス・キャロルの世界を想起させるのは意図してのことだろう。近未来の戦後という設定ながら、実に今の社会とも符合する。なので、私は今またこの映画を観返し学んだように想えるのでした。

 グロテスクさの中の美学のような映像満載で、ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロのコンビ作品はやはり特異な世界。他にも蚤使いのマルチェロ(ジャン=クロード・ドレフュス)、2歳のダンレーはお腹を空かせては食べている愛らしき存在(何が起こっているのかも分からない無垢さ)、音楽担当のアンジェロ・バダラメンティ、エンディング曲はマリアンヌ・フェイスフル、衣装はジャン=ポール・ゴルチェと素晴らしいスタッフ&キャストによるファンタジー映画の傑作に想います。テリー・ギリアム監督も大絶賛されたお墨付きでもあります☆
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ロスト・チルドレン/LA CITE DES ENFANTS PERDUS
1995年・フランス映画
監督:ジャン=ピエール・ジュネ 美術監督:マルク・キャロ
製作:クローディー・オサール 監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・キャロ、ジル・アドリアン
撮影:ダリウス・コンジ 衣裳:ジャン=ポール・ゴルチェ 
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:ロン・パールマン、ジュディット・ヴィッテ、ドミニク・ピノン、ダニエル・エミルフォルク、ジョゼフ・ルシアン、ジャン=クロード・ドレフュス、ジャン=ルイ・トランティニャン(声の出演)

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by claranomori | 2011-06-26 17:43 | 銀幕の少女たち・少女映画