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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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ピエール・ルイス 『ビリティスの唄』 訳:岸田今日子 原田和子 伊東淑子 杉田良子 イラスト:宇野亜喜良

ピエール・ルイス 『ビリティスの唄』 訳:岸田今日子 原田和子 伊東淑子 杉田良子 イラスト:宇野亜喜良_b0106921_723127.jpg

『人形』

わたしは彼女に人形を一つ与えた
ばら色の頬をした蝋人形
その腕は 小さな釘でとめられて
脚はといえば 折りたためる

わたしたちが一緒にいるとき
彼女は人形を 二人の間に寝かせる
それは ふたりの子ども
夜ともなれば 彼女はその子を揺りかごであやし
寝かせるまえに 乳房をふくませる

彼女は人形に 小さなテュニックを三枚織ってやった
そして アフロディテの祭りには
宝石をふたりで贈った
花束も添えて

彼女は人形の貞節に気を配り
一緒でなければ 外へも出さない
とりわけ 太陽の光にはあてさせない
小さな人形が 蝋の雫になって溶けるから

伊東淑子:訳 宇野亜喜良:挿絵  『ビリティスの唄』より

ピエール・ルイス 『ビリティスの唄』 訳:岸田今日子 原田和子 伊東淑子 杉田良子 イラスト:宇野亜喜良_b0106921_20525561.jpg

★19世紀末のまだ若き才人ピエール・ルイスが書いたギリシャの女流詩人ビリティス。いまだに巧妙なトリックにかかったままであったりする私。しかし、これはピエール・ルイスの翻訳でもなく偽書であり、架空の物語。でも、そのお話は21世紀を生きる私が愛する世界であるということに我ながら慄く!お人形を愛する気持ちと少女の同性愛の瞬。その後の悲痛な唄もあるけれど、この訳は好きなもののひとつ。表紙や挿絵が宇野亜喜良氏であったこと、翻訳者の中に女優の岸田今日子さんのお名前があったもので飛びついた御本。古い翻訳の雰囲気がより好きではあるけれど、この御本も時折取り出して読んでいる。ああ、少女ムナジディカも愛おしい☆
by claranomori | 2008-09-25 21:15 | 19世紀★憂愁のロマンと美