『つつじの乙女』 あるいは 『つつじのむすめ』 作:松谷みよ子
2008年 07月 30日
『つつじの乙女』という民話を元にした、松谷みよ子氏の絵本『つつじのむすめ』。どこからどこまでが民話(昔話)かは定かではないけれど、筋書きはほぼ同じようなのだ。
あるお祭りで仲良くなった高い山に住む青年と娘。その後も、娘は青年に会いたさで毎日、毎夜山を一つ越え、二つ越え(絵本では五つとある)して、暗い道を駆けてくる。手には生米を握りしめて。着いた頃にはその生米はお酒になっていて青年に飲ませてあげる(ここも、生米がお餅になっている)。次第に青年は娘を疎ましく思い出す。そして、毎夜、この暗い山を越えてをやって来る娘に魔性を見るようになる。青年は娘の差し出すお酒を飲まなくなった。娘は悲しむけれど、それでも毎夜通うのだった。そして、遂に青年は娘を山で待ち伏せして斬り殺してしまう(ここも、崖下へ突き落とすとなっている)。そうして、その山は毎年、娘の死んだ頃になると一面が真っ赤に染まり、べた一面につつじが咲く。
悲恋物語ながら一途な乙女心が美しい!しかし、青年側になってみると怖いものがあったのかとも想うけれど、何も死に追いやることはないではないか...と、その乙女の姿を想う。昔、昔のお話。当然、山道に灯りなどはない。足下も悪いだろう。けれど、青年に会いたいという一心の強さが娘には暗い険しい道も距離もなんともなかったのだろう。ああ、美しい☆