人気ブログランキング | 話題のタグを見る

あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

『セメント・ガーデン ルナティック・ラブ:禁断の姉弟』 (アンドリュー・バーキン監督)

『セメント・ガーデン ルナティック・ラブ:禁断の姉弟』 (アンドリュー・バーキン監督)_b0106921_6101653.jpg
イアン・マキュアンの小説『セメント・ガーデン』(1978年)を基に、アンドリュー・バーキンが脚本・監督し映画化されたもの。日本では劇場公開はされていないけれど、海外での評価は高く(賛否両論だったのかも)、ベルリン国際映画祭では監督賞を受賞され、また、本国イギリスでも映画賞に輝いている。ご覧になられたお方の中でも好き嫌いの分かれる作品だろう。とにかく一般的な道徳や法的なお話になるお方もおられるというのも分かるけれど、私は大好きだ!シャルロット・ゲンズブールの細く長い手足と肢体、弟役のアンドリュー・ロバートソンの長い髪とこれまた美しい肢体。彼はこの作品で映画デビューした美少年!その姉と弟の近親相姦の場面ばかりを突かれても困まる...私には全くいやらしくもなく不潔にも感じなかった。しかし、家中は日増しに死臭漂い荒廃してゆくのだ。そんなバランスが不思議な幻想をもたらすようにも感じた。
『セメント・ガーデン ルナティック・ラブ:禁断の姉弟』 (アンドリュー・バーキン監督)_b0106921_6141143.jpg
庭の雑草が嫌いな父親(ハンス・ツィッシュラー)は大量のセメントを購入してセメント・ガーデンにしてしまう。そんな父に不満の募るジャック。その父がある日亡くなってしまい、深い哀しみの母親(シニード・キューザック)は心身共に病んでゆき、病院で検査入院という矢先に死が訪れてしまう。急に両親を失った4人の子供たち。このままではみんな離れ離れに施設に入れられてしまう...そして、愛する母を地下室の箱の中にセメントで埋めてしまった。彼らの1900年以来の猛暑だという時を綴る。しかし、その時間はまるで止まってしまっているかのようでもある。そして、病死した母親を皆愛し、その不在が心を空虚にしているようにも想う。このお話は変ったかたちだけれど、家族の愛の姿、そして、思春期の少年少女の心の揺らぎ、喪失感をも語っているように想う。長女ジュリー(シャルロット)は高校生。”ぼく”である弟ジャックは15歳。その下には妹スー(アリス・コルサード)、まだ幼い弟トム(ネッド・バーキン)がいる。スーは母の死後、読書と日記を綴る日々、またトムは女装したりお化粧したりして女の子に憧れている。美しい少年ジャックは入浴嫌いでずっと同じ服を着ている、ジュリーの男友だちのデレク(ヨハン・ホルスト)が遊びに訪問してきた。異臭が漂うと気づく、そして遂にはジュリーとジャックが戯れている姿を目撃して激怒する。しかし、戸惑うことも、罪深く思うこともないふたり...最後に、ジャックが”ずっと眠っているようだ。宇宙に浮いているような”と語る。その言葉と似た気持ちで私は鑑賞していた。誰にも感情移入はしないけれど、彼らの罪は法や規律で裁くことは可能だけれど、彼らの心のイノセント、喪失感と共にまどろむ夢のような刻は痛いほどに突き刺さる☆
『セメント・ガーデン ルナティック・ラブ:禁断の姉弟』 (アンドリュー・バーキン監督)_b0106921_6105414.jpg
小説の中で”ぼく”と語る弟ジャック(アンドリュー・ロバートソン)の目から見た父の死後の4人(母と姉妹と弟)の静かな好きな場面のひとつが表紙になった外国版(パッケージは幾種類もあるようだ)。

この作品のスタッフ・キャストを眺めると驚愕する!監督のアンドリュー・バーキンはジェーン・バーキンのお兄さまなので、シャルロットは姪。また、実の息子のネッド・バーキンを性倒錯する幼い少年として出演させている。また、製作者のビー・ギルバートはアンドリュー・バーキンの奥様。また、母親役のシニード・キューザックはジェレミー・アイアンズの奥様だし、製作総指揮にベルント・アイヒンガーのお名前まであった!『クリスチーネ・F』や『薔薇の名前』等を担当したお方。ある種のカルト映画的な内容ではあるけれど豪華な顔ぶれ。でも、伯父が姪の裸体を...まあ、この一家なので不思議ではないけれど、実の息子までには驚いた。でも、アンドリュー・バーキンの審美眼は好き。制服の脚のショットが幾度か出てくるし、美少年の選び方も此処でも天才的!と大喜びの私。その美少年ジャックがイングランドの民謡『グリーンスリーブス』を歌う場面も印象的だった☆

ヴァレさまの奇跡の日記でも、”無機質でデカダン”と感想を述べておられるのだけれど、流れるエドワード・シェアマーの音楽の冷たい音色も映像の空気にピッタリだったと想う♪

セメント・ガーデン/THE CEMENT GARDEN
 1992年・イギリス/フランス/ドイツ合作映画
監督・脚本:アンドリュー・バーキン 製作:ビー・ギルバート 製作総指揮:ベルント・アイヒンガー、マーティン・モスコウィック  原作:イアン・マキュアン  撮影:スティーヴン・ブラックマン 音楽:エドワード・シェアマー 出演:シャルロット・ゲンズブール、アンドリュー・ロバートソン、シニード・キューザック、ハンス・ツィッシュラー、アリス・コルサード、ネッド・バーキン
by claranomori | 2008-07-20 07:35 | 銀幕の少女たち・少女映画