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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『ガラスの少女像』あるいは『ガラスの動物園』の娘ローラ (原作:テネシー・ウィリアムズ)

『ガラスの少女像』あるいは『ガラスの動物園』の娘ローラ (原作:テネシー・ウィリアムズ)_b0106921_5504590.jpg
テネシー・ウィリアムズの作品は映画化(舞台化)されているものが多く、私は映画からこの作家を知り次第に興味を持ち始めた。学生の頃から図書館では先ずドイツ文学やフランス文学...と優先順位が勝手に決まっていた。アンチ・アメリカではないつもりながら、どこかで好きではないアメリカがずっとある(好きな芸術家や作品もいっぱいなのでその過程)ようにも想うけれど...。そんな自分の心は解読できないけれど、心に響くもの、突き刺さるものに素直でありたい。歳を重ねる中でこんな気持ちで生きている。映画から教えていただくことは限りない!テネシー・ウィリアムズ原作の映画化で知ったものを大まかに辿ると、『熱いトタン屋根の猫』『雨のニューオリンズ』『欲望という名の電車』『去年の夏、突然に』『夕なぎ』『ガラスの動物園』『イグアナの夜』『ローマの哀愁』『蛇皮の服を着た男』...『ベビー・ドール』(これはお話と幾シーンかのお写真でしか知らず、DVD化を熱望しているもの!)。他にも未読・未見の作品はまだまだあるけれど、通じて私が好きなのは漂う哀歓のようなもの。これらの作品は広大なアメリカ、それも南部のアメリカ、その町で生活する人々の姿を見ることができるよう。
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『蛇皮の服を着た男』の原作は『地獄のオルフェウス』。映画では『欲望という名の電車』のマーロン・ブランドが再び出演。こうしてみると、映画の中で主要な役柄を演じている名優方は重なっているようだ。ヴィヴィアン・リーやエリザベス・テイラー然り、そして、『熱いトタン屋根の猫』で苦悩する同性愛の男性を演じた(時代的に規制が厳しく描かれ方はかなり抑制されたもの)ポール・ニューマンが『ガラスの動物園』では監督。この『ガラスの動物園』は幾度か観ている。すっきりしない余韻は決して快適ではないけれど、母親のアマンダ(ポール・ニューマンの奥様のジョアン・ウッドワードが演じている)、娘ローラ(カレン・アレン)、息子(ジョン・マルコヴィッチ)、ローラの憧れのジム(ジェームズ・ノートン)という出演者4人による室内劇にアメリカを感じた!アメリカの病理のような(似通った状況の日本に生きる世代のせいだろうか)...それはテネシー・ウィリアムズご自身のお姿や社会を作品に投影しているので迫り来る強力な印象が強い。実際のお姉さまは精神を病み入院されていた。ご自身も精神的な病を抱え、かつ、まだ当時では公表できずにいたゲイであるということも。作家として成功されてからも、ずっと精神病院の姉を見守ったそうだ。この映画は元々は舞台劇で既にジョアン・ウッドワードとカレン・アレンで演じていたという。

母親との葛藤、姉を慕う弟トムはウィリアムズと重ねてしまう。カレン・アレンはアル・パチーノがゲイに扮して話題になった『クルージング』で知った。この頃のカレン・アレンはとても体型もか細く、神経も繊細でヒリヒリする感じがして好き。脚が不自由で高校を中退してしまうローラが憧れていた青年ジムとの再会の場面と最後のトムの語りが心に残ったまま。『ガラスの動物園』の前に、短編で『ガラスの少女像』としてほぼ同じお話で書かれているのだけれど、私はこの”ガラスの少女”という響きが好きで、部屋に篭り、ガラス細工の動物たちを大切に静かに(深い劣等感と共に)過ごしているローラは映画の中でも今にも壊れてしまいそう。カレン・アレンはそんなローラ役にピッタリだったように想う。ジムは結局ローラの心を救うどころか...彼の語る”普通の人々”とはジムもではないだろうか!とローラの心に光が射したかと想うと曇り壊してゆくのは簡単なのだ。ジムに悪気はないけれど私はローラが好きでたまらない...何故だろう。
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ガラスの動物園/THE GLASS MENAGERIE
       1987年・アメリカ映画
監督:ポール・ニューマン 原作:テネシー・ウィリアムズ 撮影:ミヒャエル・バルハウス 音楽:ヘンリー・マンシーニ 出演:ジョアン・ウッドワード、カレン・アレン、ジョン・マルコヴィッチ、ジェームズ・ノートン
by claranomori | 2008-07-11 06:53 | 文学と映画★文芸・史劇