あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『噂の二人』 二人の女性教師カレンとマーサ、そして、少女メアリーとロザリー♪

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『噂の二人』はリリアン・ヘルマンの戯曲『子供たちの時間』を原作に、ウィリアム・ワイラー監督が1961年に映画化されたもの。監督は1936年にも『この三人』として『子供たちの時間』を映画化しているのだけれど、検閲により内容の変更を強いられたもの。『この三人』では脚本もリリアン・ヘルマンが担当している。また、『噂の二人』でのマーサ(シャーリー・マクレーン)の叔母役ミリアム・ホプキンスが『この三人』ではマーサ役を演じていた。ウィリアム・ワイラー監督は25年の年月を経てようやく本来の思いで映画化できたのかもしれない。それでも、時代は1961年。ハリウッドの世界は勿論、一般的にも時代的にも”同性愛”のテーマを扱うこと、偏見や色々な反応を受けただろうと想う。私はオードリー・へプバーンもシャーリー・マクレーンも大好きなのでこの共演ということで初めて観た時はまだ若かった。リリアン・ヘルマン(もっと大好きな作品に『ジュリア』がある)のお名前も知らない頃。また、こんなに心が痛む映画だとも想わずに観たものだった。
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17歳の女学生時代からの仲の良い親友であるカレン(オードリー・へプバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は少女たちの寄宿学校を共同経営している教師。経営はまだ軌道に乗っている状態ではないけれど仲睦ましく過ごしていた。美しいカレンには婚約者のジョー(ジェームズ・ガーナー)がいる。ジョーはマーサとも良き友人なのだけれど、彼がカレンに会いに来るとマーサは苛立ちを隠せない。叔母もこの寄宿学校で働いているのだけれど本業は舞台女優で、姪のマーサの援助を受けている。叔母はある日、マーサが28歳にもなって恋人もいないことや、ジョーが来ると態度が変ること、それらを異常だと口論になる。そのお話をドアの外で立ち聞きしていた少女たち。また、この映画の中でかなり重要な役である少女メアリー(カレン・バルキン)は問題児で、平気で嘘をついたり友人に意地悪をする少女。彼女はとってもお金持ちのお嬢様で優しいおばあ様(フェイ・ベインター)がいる。両親は登場しない、彼女のあの屈折した心は何処から来るものか...とも想う。また、今も活躍されているヴェロニカ・カートライトが可愛い少女ロザリー役。またこのロザリーも重要な役で、同じ部屋のヘレンという少女のお誕生日に贈られた素敵なペンダントを盗んでいた。返そうと想った時に部屋交代でやって来たメアリーにその秘密を知られてしまう。メアリーはロザリーのその秘密を悉く利用して威嚇する...この辺り、残酷な子供の一面、意地悪な少女の一面を見せ付けられ気分は良くない。でも、そんな少女は(大人も)いるのだ。ロザリーは窃盗癖があるようで母親のもの等も隠し持っていたことが終盤に明るみになる。1936年の『この三人』として映画化された時に、監督は『嘘』というタイトルも考えていたそうだ。子供たちの噂話からメアリーが嘘のお話をロザリーが見て聞いたのだとおばあ様に告げる。カレンとマーサが恋人同士だという嘘がたちまちに広がり、みんな親に引き戻され寄宿学校に生徒は誰もいなくなってしまう。カレンもマーサもジョーも全く意味がわからない。何があったのか!!と。ある生徒の父親から強引に聞き出しメアリーに問うのだけれど、彼女は全てロザリーのせいにする。ロザリーはヘレンのペンダントの事を知られると叱られると想い、”私が言った”と語り泣き崩れる。その時のメアリーの表情や態度も憎憎しいほどで、ロザリーが真実を語ることを私は願うのだけれどそうは行かない(お話しは既に知っているのに)。

名誉棄損の裁判も(マーサの叔母の証言が得られず)負けてしまう。新聞にも書き立てられすっかり二人は人々の噂、好奇の眼差しの対象になる。婚約者のジョーは二人を大切に想ってはいるものの、心のどこかに二人の仲を疑っている心、それが哀しいカレンは彼と別れる決意をする。マーサは少女たちの嘘から自分の気持ちがまざまざと湧き上がる。カレンにその気持ちを打ち明ける”愛しているのよ”と。カレンは驚くが彼女たちの絆は深い。でも、外に出れば見世物のように野次馬たちが一目見ようと待っているので外出もできない。ジョーと別れることをマーサにカレンは伝えるとマーサは自分を責める、”汚らわしい”と。カレンは二人で再出発しようと決めている。カレンが少し外を散歩している時にマーサは鍵を閉め部屋で自殺してしまう...マーサの葬儀に、カレンは”マーサ、決して忘れないわ”とお花を摘み人々が遠目にいる中を、涙を湛えながらも昂然と少し微笑みも浮かべ顔を上げて歩いてゆく...かなり重いけれど秀作☆

オードリーの出演シーンの方が多いけれど、オードリーよりも少し実年齢の若いシャーリー・マクレーンは、やっぱり此処でも素晴らしい!!じわじわと切々と伝わるこの難しい役を演じている。でも、後にシャーリー・マクレーンはこの当時、画期的な役柄を与えられもっと深く表現できるチャンスだったのに、よく理解できずにいた(マーサや同性愛の葛藤の心理など)とご自分の演技に納得されていないような発言をされていた。誠実なお方だとその時も感動した。そして、さらにこの女優さまが好きになっていた。今もご健在なのも嬉しい!

※このお話は、エジンバラで実際に起きた事件からリリアン・ヘルマンの戯曲が書かれ、映画化される以前に舞台劇として好評を博したものでもあるそうだ。このエジンバラの事件のことも、もう少し知りたいと想う...。

(追記)
★1930年代に舞台劇として大好評だったというものの映画化。その舞台を知らないけれど、表現はどこまで許されたのだろうか...とふと疑問が過ぎる。最初の映画化に当り、監督はタイトルを『この三人』と変えている。色々な検閲からの要請があったようだ。脚本は原作のリリアン・ヘルマンが担当している。”この三人”とは女教師で親友のカレンとマーサとカレンの婚約者のジョー。カレンとマーサがジョーを巡って...という内容にお話も変えられている。1936年という時代に同性愛は禁断でありタブーであったのだろうから仕方がない。ウィリアム・ワイラー監督はそれでも、25年もの年月を経て原題と同じタイトルでこのタブーを描いた。監督はカレンとマーサの窮地に追い込まれてゆく様子、世間の眼差し、子供たちの嘘(少女メアリーもこんな大事になるとは想ってはいなかったのだろうけれど)...それらの人間の繊細な心を描きながら問うようでもある。”人間の尊厳”とは?!また、”愛”とは?!と。尊い信念や気持ちに邪な偏見で揶揄される人々。リリアン・ヘルマンというと”赤狩り”時代にブラックリストにも登録されている左翼運動家のお一人である。彼女の優れた戯曲(作品)たちは多くの映画で知ることが出来て嬉しい。リリアン・ヘルマンの出世作ともなったこの『子供たちの時間』を書くように奨めたのは長年の相棒でもあったハードボイルド作家のダシール・ハメットだそうだ。英国のエジンバラで実際に女性教師が同性愛者のために学校が閉鎖されてしまったという事件をハメットが知り、その人間の尊厳や屈折した心理に興味を抱いたのだろうか...。この事件については私は全く知らない。1930年代、1960年...2008年の現在の時間の流れ。今でもまだまだ偏見はある。いつも想う。何故、人が人を愛する気持ちに”汚らわしさ”を感じるのだろうか。女性が女性を、女性が男性を、男性が男性を...その気持ちの何が?と。

可憐なオードリーは此処でも凛として素敵だ。でも、後半切々と胸に響くマーサの気持ち、それを演じたシャーリー・マクレーンの演技は感動的だった!!共に素晴らしい女優さま♪

噂の二人/THE CHILDREN'S HOUR
     1961年・アメリカ映画
監督:ウィリアム・ワイラー 原作:リリアン・ヘルマン 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影:フランツ・プラナー 出演:オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンス、フェイ・ベインター、ヴェロニカ・カートライト、カレン・バルキン
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by claranomori | 2008-06-12 23:52 | 銀幕の少女たち・少女映画