少女クロランド (レイモン・ジャンの『読書する女』より)
2008年 02月 28日
この少女の母親はキャリア・ウーマンで毎日多忙な日々を過ごしている。ゆえに、クロランドはいつもお家にひとりぼっち。母親は何冊かの本を買え与えてはいるけれど読んで聞かせてあげる母親ではない。マリー=コンスタンスがやって来てクロランドに読んであげたのはルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』。読んでいると、クロランドは急に台所に向かい、戸棚の中のマーマレードを手にし勝ち誇ったかの様子...お話を座って聞いていたかと思うとすぐに動き出す。でも、そのアリスのお話に連動しているようにも想い、私はこの時期の少女らしい行動だなあ~と想ったりもした。遂に、朗読を続けるのは困難となる。クロランドはお家の鍵を取りに行く。
「お外に出ましょうよ、こんないいお天気なんですもの!
あたし、お外に出たことないの・・・・・・ママの帰りは遅いし!」
クロランドはバラ色の頬をして、ぜんまい仕掛けのお人形さんのような目をし、実に惚れ惚れするくらい愛らしかった。なので、抵抗できなかったマリーは鍵を預かり外に出ることにした。クロランドはなにか企んでいると感じながらも...。クロランドがささやく。
「何も言わないでおこうね、あたしたちの秘密よ!」
クロランドはまるで一人前の女性のようにお金を払ったり振舞う。こっそり母親の部屋から宝石やスカーフ、帽子...を身に付けて驚喜している様子。映画の方もミュウ=ミュウ(ミウ=ミウ)の魅力に溢れていて好きだけれど、この少女との場面は映画ではあっけなく感じた。
こんな冒険の日に限り、母親の帰宅は早かった。『不思議の国のアリス』の本は開いたまま、ふたりの姿はなく、自分の部屋の宝石がごっそり無くなっているので、母親はマリーを娘を誘拐したうえに盗人だと思いヒステリー状態!その後、ふたりが戻ってきて持ち出したものは全部あることなどは理解された。泣きじゃくるクロランド...そして、マリーは母親が娘を許してくれますようにと願いながら次のリスナーのお話へと続く...。
モーパッサン 『手』
ゾラ 『制作』
モーパッサン 『首飾り』
エンゲルス(作中マルクス) 『反デューリング論』
ボードレール 『悪の華』より「猫」「宝石」
マルクス 『経済学批判要網』
クロード・シモン 『実物教育』
モーパッサン 『ほんとうにあった話』
ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』
ペレック 『W』
ポンジュ 『物の装い』
アレティーノから法王クレメンス七世宛書簡
マルキ・ド・サド 『ソドムの百二十日』
デュ・ベレ 『愛惜詩集』
ルーボー 『ソネット詩』
☆ここに挙がっていない作品で映画の中で印象に残った作品がある。マルグリット・デュラスの『愛人 ラ・マン』とジャック・プレヴェールの『馬の話』♪