ロール・ラウストは、ロベール・ゲディギャン監督の『幼なじみ』(1998年フランス映画)の主人公クリムを演じていた少女。大きく優しい瞳や表情が可愛い。タイトルとチラシの雰囲気で観た映画なので、原作のジェームズ・ボールドウィンの小説のことも知らず(今も未読)、テーマにはとても重い深刻なものがあるのだと考えさせられた。でも、観終えた後の気分はあたたかなもの...きっと、監督の描きたいことは深いけれど辛気臭くない。それは、港町マルセイユの陽光と16歳の少女クリムと18歳の黒人少年ベベ、そしてお互いの家族たちの愛情、絆の強さ、”独りぼっちではない”...というような静かで力強いものがあるからだと想う。前作『マルセイユの恋』のヒロイン役だったアリアンヌ・アスカリッドがクリムの母親役に扮している。姉役のヴェリニク・バルムも美しい。けれど、ロール・ラウストの瞳があまりにも印象強く残っている。私はとても瞳に弱いと、再確認したような☆
タイトル通りに幼馴染のクリムとベベは自然と成長する中で恋が芽生える。そして、まだ若い二人に新しい生命が宿ったのだ。当然、親たちは戸惑うのだけれど、生まれてくる赤ちゃんの命の尊さを知っている人たちばかりで良かった。ベベは絵を描いたり彫刻をしている黒人の少年。人種差別主義者の警官によって無実の罪(レイプ犯)とされ投獄されてしまう。全くの無実なのだけれど、これにはサラエボに旅立つクリムの母、その意味と行動。旧ユーゴ武力紛争での陰で行われていた数々の犠牲者たちの存在...そのことを鮮明には監督は描かない。観る者に問題提起をしながらも、クリムとベベの純粋な愛、これから誕生するすべての子供たちに希望の光を与えたもの。肌の色や国籍の違い、人と人との戦争などは愛の尊さを奪い取る権利など世界中にないのだと。ロベール・ゲディギャン監督は英国のケン・ローチ監督が好きだと語っていたけれど、観ていて通じるものを感じた。その土地で働く人々を愛を込めて描きながらも、痛烈な厳しい問題提起もされる作風。”生への謳歌”が爽やかな感動として響くのだった。
他人の心の奥はわからない。
自分の心だってわからない。
心とは宇宙のように神秘的なものなのだ。
人は神秘をかかえながら生きる。
でも現代人は何でも知ろうとする、
だから皆、途方にくれる。
”クリムの独り言”より