あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『亀も空を飛ぶ』 少女イグリン(アワズ・ラティフ:AVAZ LATIF) イラク・イラン合作映画 2004年

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★『酔っぱらった馬の時間』『わが故郷の歌』のクルド人監督バフマン・ゴバディの2004年作品。欧州、アジア、北南米各地の映画祭で28に及ぶ賞に輝いている。2005年にはベルリン国際映画祭の青少年審査員部門に招待され、映画祭全作品の中から選出される『平和映画賞』を受賞されている。にも拘わらず、日本ではレンタル屋さんにもないようで、DVDもボックス仕様の高額商品。なので、観たいと思ったお方がおられても安易に観ることは出来ない現状。学校教育の中でも充分に教材として成り立つ作品のように思う。私はイラン=イラク戦争をテレビやニュースを通して知るのみ。クルド人という人々の生活、日常、子供たち...こうした映画のお陰で辛うじて知り考えることができる。小難しい理屈を並べるよりも、ずっと訴えて来るものがある。この映画はドキュメンタリーでもなく、思春期映画でもないけれど、皆素人のクルド人の子供たちが主役。中に、独りの少女イグリン(アワズ・ラティフ)の目の行方は...この眼差しに惹きつけられた。1枚のチラシ、小さなお写真から”この映画を観たい!”と私は想った。悲惨である。観終えたあとかなり考え込む。ハッピーエンドなはずはないのだから...。

舞台となるのはハラブジャというところ。サダム・フセインが科学兵器を使って5000人のクルド人を殺害した土地だった。この少女アグリンはその為に両親を失い孤児となってしまった。彼女には両腕のないヘンゴウという兄がいる。彼らクルド人の子供たちは身を守る為には自ら武器を手にしなくてはならない。また、生活する為には散乱する地雷を集めて売るのだ。アグリンの小さな背中よりも大きな籠の中には地雷がいっぱい。そして、この11.2歳位だろうかという少女の背中には2歳の赤ちゃんがいる。その赤ちゃんは目が見えない。衝撃的すぎる!この赤ちゃんは兵士にレイプされて産まれた子。まだ小さな少女の意など此処には無い。淡い恋をする時間も無い。無邪気に笑い過酷な毎日を過ごす体の不自由な少年たちと違い、アグリンは一切笑わない。この少女に残されたものとは何だろう...!私のような人間、幸せな子供時代を送ったとしか思えない者に、彼女の気持ちは分かりはしないだろう。でも、このような映画を知り得たことを嬉しく思う。私の好きな戦争映画は、このような戦争の合間の子供たちや人々を描いたものが多いように思う。何故、こんな目に遭わなければならないのだろう...これは、ただ可哀相だという次元ではなく、大きな権力や暴力、力に対する非力な者の今なのだ。思春期など無く大人になってしまうかのような、儚き子供たち。

監督は「私はまたある意味で、これは子供たちに関する映画ではない、とも信じています。これは子供時代を持たないまま、大人にならざるを得なかった若者たちについての映画なのです。ヨーロッパなどの地域の大人たちが決して知ることのない苦しみを、この子供たちは彼らの短い人生で経験しているのです。」と語っています。このアワズ・ラティフ(撮影当時11.2歳位でしょうか)はこの映画が初出演だけれど、今後も女優の道をと監督は願っているそうだ。是非そうであってほしい☆
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亀も空を飛ぶ/Lakposhtha ham parvaz mikonand
b0106921_16285192.jpg2004年 イラク・イラン合作映画
監督:バフマン・ゴバディ 出演:アワズ・ラティフ、ソラン・エブラヒム、ヒラシュ・ファシル・ラーマン、アブドルラーマン・キャリム、サダムホセイン・ファイサル
アメリカによるイラク侵攻を背景に、イラク北部の小さな村を舞台に、クルディスタンで過酷な状況の中たくましく生きる子供たちの姿を、リアリズムと幻想的表現を混在させつつ力強く描き出した衝撃のドラマ。

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by claranomori | 2007-10-14 21:14 | 銀幕の少女たち・少女映画