『恐るべき子どもたち』 萩尾望都
2007年 08月 28日
恐るべき子どもたち/萩尾 望都
★16歳の少女エリザベートと14歳の少年ポールの姉弟。この双子のようでもある美しいふたりと、悪魔的な美少年ダルジュロス、ポールを想うジェラール、またダルジュロスに似た娘アガート。これらの少年少女たちが織りなす子供の無邪気さと残酷さ。描かれる姉弟の愛、同性を想う心理描写、あまりにも繊細に表現されている。私は、少女漫画ばかり読んでいたお陰に感謝している!変な日本語だ...月刊セブンティーンでの連載だった(友人のご姉妹から貸して頂いたのが最初。当時はよく交換して読み合ったものだ)。ジャン・コクトォの原作より、鮮明な衝撃に驚愕した。何と言えばよいのだろうか...読んだ時期や、私に弟がいることも関係しているのか、すんなりとお話の中に入り込んでいた。私が今も好きなもの、世界に望都さまの漫画(「トーマの心臓」と「ポーの一族」は最期まで傍に居てほしい!)からの影響は計り知れないものがあるのだと思う。少年時代~夢幻世界~外界~無限世界と僅か4年程の儚い刻。特にラストの20数頁の張りつめた緊張感(微妙な表情の描写など壮絶だ!)と読後の余韻・・・”夢幻に出かけましょう・・・・・”という言葉が焼きつき、私はショックと感動で涙が止まらないのだった(今も綴っていると泣いてしまう)。白い雪球で幕を明け、黒い毒薬とピストルで終える。死に至る姉妹はそのまま無限の世界に旅立ったのだろう。嗚呼、美しい!!ジャン・コクトォの小説に対する敬愛と共に、望都さまの『恐るべき子どもたち』(※表記は”子供”ではない)はひとつの芸術作品であると思う。漫画を馬鹿にしたり偏見を持たれるお方もおられるだろうけれど、文学と同等な芸術作品だと思う。映画がそうであるように(もちろん、好みや完成度も様々だろうけれど)。
恐るべき子供たち/ジャン・コクトー
★1929年にジャン・コクトオが阿片中毒の治療入院中に書き上げた小説。1949年にコクトオの懇願により実現した、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の映画『恐るべき子供たち』も大好きなもの。この映画ではナレーションでコクトオのお声が聞ける。