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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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ビヨークの『ネズの木』~グリム童話より~

ビヨークの『ネズの木』~グリム童話より~_b0106921_7445958.jpg1986年 アイスランド映画

監督:ニーツチュカ・キーン
製作:ニーツチュカ・キーン
原作:グリム兄弟
脚本:ニーツチュカ・キーン
撮影:ランディ・セラーズ
音楽:ラリー・リプキス

出演:
ビョーク
ブリンディーズ・ペトラ・ブラガドゥティル
ヴァルディマール・オルンフリーゲンリング
ゲイルロイグ・スンナ・ポルマル

ビヨークの「ネズの木」/THE JUNIPER TREE

◆あらすじ◆
中世アイスランドの片田舎で、魔女裁判により母親を殺されたカトラ(ブリンディーズ・ペトラ・ブラガドゥティル)とマーギット(ビヨーク)姉妹。彼女たちは放浪の末、農夫ヨハン(ヴァルディマール・オルンフリーゲンリング)と息子ヨナス(ゲイルロイグ・スンナ・ポルマル)と知り合い、カトラは魔法を用いてヨハンの妻となる。しかし、ヨナスはカトラに馴染まず、マーギットと仲良くなっていく。そんなある日、マーギットの前に死んだ母の霊が現れ、彼女のなかに眠る魔力を呼び覚まそうとする。

★2000年の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は世界中で大ヒット!カンヌ国際映画祭ではパルムドールと最優秀女優賞(ビヨーク)を受賞した。そんなお陰で、日本でも初登場となったこの『ネズの木』は、実はビヨークの映画デビュー作品で20歳の頃のもの。ビヨークのお顔や小さな体型は今も年齢不詳なある少女性を維持し続けているように思う。日本人ぽいお顔は幼少の頃から友人たちからも指摘されていたそうで、そんな事からか日本が好きだと仰る。このグリム童話の「ネズの木」を大きくアレンジしての映画化。名作!とか感動作!とか...とは違う。ただ、とてもいつまでも映像の醸し出す雰囲気が印象的に私の中に焼き付いている。長年お蔵入りしていたのも納得というか、ある種のカルト作品なのだろう。アイスランドの荒涼とした自然の中、淡々とモノクロームな暗い映像。ドキリとするシーンもある。

子供の頃に児童書として読む童話の世界はロマンティックでメルヘンな世界。しかし、私が大人になっていく中でもう少し違う感覚で読み直してみたり、こうして映画の世界で鑑賞したりする内に、童話やおとぎ話の世界にはかなり残酷なものがあると気づく。この映画はそんな残酷性をさらにつよく打ち出して描写しているので、綺麗な明るい世界ではなく、かなり、とっても!ダーク・ファンタジー。日本の童謡、わらべ歌にしても歌詞をよく読むととてもギョっとする時がある。子供の世界も、少女の世界も同じようにただ可愛いだけではなく時にドキリとする残酷性が顔を出す時がある。これは一概には言えないけれど...。私の好きな世界にはメルヘンとアンチ・メルヘンがあるのだと思う。なので、全ての方がお好きになる映画ではないだろうけれど、私は好き。とっても!でもなく。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は観て良かったとは思うけれど、個人的に好きな映画ではない。こんなにやるせない、怒りの様な涙が止まらなかった映画はない。しかし、それ程のインパクト、作品の力があるという事で、ラース・フォン・トリアー監督の世界は独特なものがあるのだと思う。新作が出ればやっぱり観てしまうのだから。ビヨークは好き嫌いの分かれるアーティストだと思う。でも、あの歌声が聞こえるとすぐに「あっ、ビヨーク!」と分かる、そんな唯一無比のヴォーカリストである事は間違いないように思う。音楽性も幅広いのでファン層も広いのではないだろうか。私はシュガーキューブスで知ったので、その衝撃はとても大きなものだった。アイスランド語ヴァージョンというものも有ったりして、当時レコード屋さんで彼らのシングルを入手するのは結構大変だった。ビヨークの音楽についてはまた追々。この『ネズの木』の中でもビヨークの歌声が聴けるのもファンのお方には嬉しいところだと思う。
by claranomori | 2006-09-04 20:42 | 銀幕の少女たち・少女映画