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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『小林秀雄』 著:石原慎太郎 ★ 『私の好きな日本人』 (2008年) より

『小林秀雄』 著:石原慎太郎 ★ 『私の好きな日本人』 (2008年) より_b0106921_19274499.jpg

僕は政治的には無知な国民として事変に処した。黙って処した。それについて今は何の後悔もしていない。大事変が起こった時には、必ずもしかくかくだったら事変は起こらなかったろの復讐だ。はかない復讐だよ。この大戦争は一部の人達の無知と野心から起こったか、それさえなければ、起こらなかったか。

どうもぼくにはそんなおめでたい歴史観は持てないよ。ぼくは歴史の必然性というものをもっと恐ろしいものと考えている。ぼくは無知だから反省はしない。利巧な奴は(お前らは)たんと反省してみるがいいじゃないかね。

小林秀雄 
著:石原慎太郎 『私の好きな日本人』 - 小林秀雄 -
より

★観念的左翼陣営の批評家たちが、戦後の流行であった日本の知識人たちの戦争批判を、なぜ一緒にしてくれないのかという言い分に対して、小林秀雄(明治35年:1902年4月11日~昭和58年:1983年3月1日)という日本最強の近代文芸評論家は、この(上記の)ようにいい切り突き放す。また、戦後以降今日まで流行る進歩的文化人なる手合いをこれほど無下に切り捨てた論も滅多にない。何も小林秀雄なる人の権威のせいではなしに、それ以前に、小林秀雄という一人の人間の強固な存在感の故に他ならない、と石原慎太郎は語っている。

若き日の石原慎太郎の小林秀雄との想い出、そして小林秀雄と様々な人々との邂逅などが綴られる中で伝わる小林秀雄への畏敬の念、また微笑んでしまうような逸話もあり愉快である。小林秀雄の他の戦前戦後の数多の知識人たちとの知性の格の違い、それ以上に人間としての分厚さが格段に違うのだ、と言い切る。傍若無人な強烈な個性、さらに保守文化人であり愛国者としての正論等々は、今日の批判反撥を向うにし老骨にむち打ち孤軍奮闘する石原慎太郎という人の姿でもあると想います。石原慎太郎が『私の好きな日本人』の一人に小林秀雄を挙げているのだけれど、すべてに於いて格段の差のある私が畏れ多くも、今生きる日本で、「私の好きな日本人」の一人に石原慎太郎を胸熱く挙げたい。荒っぽい物言いの中に培った教養と体験が帯び、その発言者たるはやはり小気味よいのである。文学者、あるいは政治家としての石原慎太郎という以前に、一人の人間の強固な存在感の故に他ならない。普通ならゆっくり過ごしたい老境であろうに、そうはゆかない今日の憂国ぶり。先述の萩原朔太郎の「古いことの正義」の系譜とも云える気概、粋な姿はかっこいい!
by claranomori | 2012-02-19 18:58 | 愛の花束・日本の抒情・文学