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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『華氏451』  監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』 (1966年)

『華氏451』  監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』 (1966年)_b0106921_1283319.jpg
★フランソワ・トリュフォー監督の1966年作品『華氏451』。トリュフォー映画としては初めての英語圏作品であり、異色作だと想います。初めて観たトリュフォー映画は『黒衣の花嫁』でしたので、最初はこの『華氏451』がトリュフォー監督作品だとは思いませんでした。初見はテレビ放送で、ジュリー・クリスティとオスカー・ヴェルナー共に初めて知った想い出深い映画でもあります。原作がレイ・ブラッドベリの『華氏451度』であることも後に知った程、まだ10代の私にはほとんど資料的なものは皆無でした。けれど、その映像(色彩)に惹きつけられ、また、ジュリー・クリスティが直ぐに好きになりました。再度観返してから感想を書こうかと想いましたが、今の時代に共通するものを何となく感じるので、映画の細部の記憶はおぼろげで、映画とレイ・ブラッドベリの原作が混淆しますが思いつくままに大まかなお話を。
『華氏451』  監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』 (1966年)_b0106921_1285818.jpg
主人公のモンターグ(オスカー・ヴェルナー)と、妻リンダと隣家の少女ソラリス(ジュリー・クリスティの二役)の三人はやはり印象的。近未来という設定ながら私にはSF映画であるけれど其処に留まる描き方ではないように想う。モンターグは書物を読むことを禁じられた世界での焚書官で、消防士であるファイアーマンの任務は書物を発見してはそれらを焼く作業である。華氏451度とは摂氏220度で、紙の自然発火温度のこと。瞑想すること、思考を促す行為を禁じている社会に於いて、読書なるものは当然必要悪であり、犯罪行為である。ゆえに、この焚書官であるモンターグの任務は重大。しかし、本に興味を抱く隣家の少女ソラリスと会うなかで、なにかしら心の動揺が生じてゆくことを感じる。ある密告により老女が自ら本と共に焼身自殺をする。この場面はやはり印象強く残っている。少女ソラリスも事故死し、話し相手を失ったモンターグは書物を読み、思考する喜びを得る。妻のリンダはテレビに夢中で愚かな女性と描かれているが体制に従って生きている人々である。書物愛好家の教授との出会いなどもあるが、モンターグは妻の密告により自分の本を焼く日が訪れた。本を焼いた後、モンターグは逮捕される前に逃亡する。その行き着いた先で、本を暗唱して口伝えにその知識を共有する人々のグループに合流する。戦争が始まり、都市にミサイルが投下される中、ようやくモンターグは新たな使命を感じるのだった。
『華氏451』  監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』 (1966年)_b0106921_1444031.jpg
★レイ・ブラッドベリの『華氏451度』は1953年に発表された。この時代のアメリカはマッカーシー旋風の頃で、その反感からこの『華氏451度』を書くことにもなったという。マスコミによる制御、映画界も標的となり、多くの赤狩りへと発展してゆく頃のこと。情報操作、制御による愚民政策へユーモアを持った反抗として素晴らしい作品だと想う。古くから、ある権力の下に焚書行為は世界中で行われて来た。日本も第二次世界大戦後、GHQによって焚書された書物がある。焼かれる運命の書物を愛好家たちが諳んじ共有する共同体。私がもしもこのブラッドベリが描いた世界に生きているとすればその人々と共に行動したい。その想いは絵空事ではなく、今の日本も一般庶民の手に負えない大きな権力や組織がメディア工作している。近くて遠い国に囲まれた我が国日本の危機意識の薄さを感じながら、政治的イデオロギーとやや距離を置きながら、残された人生、私が私である為にも我が国日本、国家とは何かと考えながら生きてゆきたい。東日本大震災は大きな転機であり、悲劇に終わらせてはならないと想います。日本人の忘れかけていたもの、その尊い文化や美を精一杯心に刻んで生きてゆこうと想っています。ある友人曰く、私は文化保守というのだそうです。しかし、今右派や左派とか云ってる場合ではない問題が山積みの正しく国難状況。日本に限らずアメリカもヨーロッパもアジアも大変な時期ですが、それら各国の優れた文化や歴史は学びの宝庫なので、私なりのバランスで美しきものとの旅路を全うできたら本望に想います。

華氏451/FAHRENHEIT 451
1966年・イギリス/フランス合作映画
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:ルイス・M・アレン
原作:レイ・ブラッドベリ 『華氏四五一度』
脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン=ルイ・リシャール
撮影:ニコラス・ローグ プロダクションデザイン:シド・ケイン
衣装デザイン:トニー・ウォルトン 編集:トム・ノーブル 
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オスカー・ヴェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング、ジェレミー・スペンサー、アレックス・スコット

★追記です。
映像、殊に色が鮮明に焼きついているのですが、撮影は映像の魔術師とも謳われる英国監督ニコラス・ローグでした。ニコラス・ローグ監督と云うとデヴィッド・ボウイ主演の『地球に地球に落ちて来た男』です
by Claranomori | 2012-01-13 11:24 | 文学と映画★文芸・史劇