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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『かわいい子どもたち』 ファンションと小鳥たち ★ 作:アナトール・フランス 訳:小林正 挿絵:斎藤長三

『かわいい子どもたち』 ファンションと小鳥たち ★ 作:アナトール・フランス 訳:小林正 挿絵:斎藤長三_b0106921_837275.jpg
二年程前に、アナトール・フランスの『少年少女』という御本を久しぶりに再読した折に少し綴りましたが、今日はもっと以前から家にあった少年少女世界文学全集のフランス編の中から再び。先述の『少年少女』は岩波文庫版の三好達治訳ですが、こちらは講談社版の小林正訳です。題も『かわいい子どもたち』となっています。5編収録されているのですが、中でもこの「ファンションと小鳥たち」の挿絵(斎藤長三)の少女の姿がとても愛らしいので胸ときめき、わくわくしながら読み終えました。

ファンションはまだ一桁の小さな少女で、おばあさんのお家に行くのがとっても楽しみ。おばあさんもまた、孫娘に会い一緒に過ごす時間をとても楽しみにしている。おばあさんは会うたびに大きくなってゆくファンションを愛おしく見守っている。そして、おばあさんも嘗てのファンションの歳の頃を想い出したりするのだろう。大きくなってゆく少女と小さくなってゆくおばあさんは、正しく往還する女と少女であるので、私は老女と少女のお話は大好き!私個人はおばあさんという存在を知らない。父方も母方の祖母も私が生まれる前にとても若くして亡くなっていたので。それ故に、おばあさん、おばあちゃんという存在に憧憬を抱くのかもしれない。

小さなファンションは分からないことが多く、その都度、おばあさんに尋ねる。おばあさんとの会話で学ぶことは新鮮なことなのだ。かわいい孫娘のために、おばあさんはオムレツやパンケーキを作ってくれる。ファンションはおばあさんの手作りのお料理が大好き。そして、色んなお花や草木の茂るおばあさんのお庭で遊ぶことも。そのお庭には小鳥たちもやって来る。ファンションはパンくずをちぎっては小鳥たちに。けれど、色んな色の小鳥がいるように、太った元気の良い小鳥や、やせ細った小鳥、威勢よくパンくずを突きにやって来る小鳥も居れば、なかなか食べることの出来ない小鳥も居る。優しい少女ファンションは、小鳥たちと遊びながらも自然と学んで行く。パンくずをどの小鳥にもあげられるように、小さくちぎって。小鳥たちは嬉しくて囀る。その歌声を聞くとファンションも嬉しくなる。小鳥たちは小鳥たちの言葉で歌い語る。その意味は「神さまがおまもりくださいますように。」とファンションにお礼の気持ちを託して。ファンションは空の歌声に送られながら、おかあさんのもとへ帰ってゆくのでした。

小さな子供は子供なりに思考する。私は長い間、この世の中に悪い人は居ない、と思って大人になって行った。けれど、世の中には悪意というものが存在し左右され、人を傷つけることになったり、人や社会との関係に亀裂が生じることも多々あるのだと今は想う。みんなが仲良くというのは最上の理想なのかもしれない。あまりにも世の中は殺伐としている。それでも、せめて、身近に居る家族や友人、隣近所の人達のことを案じる気持ちは失いたくはないと今も想う。否、今だからこそ、強く想う。

★『かわいい子どもたち』(講談社 少年少女世界文学全集)の収録内容を記しておきます。※後の題名は『少年少女』(岩波文庫)の方です。
●「ファンションと小鳥たち」 ― 「ファンション」
●「学校で」 ― 「学校」
●「フレデリックの勇気」 ― 「勇気」
●「カトリーヌのお客さま」 ― 「カトリーヌのお客日」
●「野あそび」 ― 「野あそび」
以上の5編が収録されています。
by Claranomori | 2011-12-11 08:50 | 本の中の少女たち・少年たち