★ヨーロッパのところどころに「悪魔の橋(devil's bridge)」と呼ばれる橋が存在し、その橋架けに悪魔が手を貸したという伝説がある。日本にも似たお話があるようですが、色々読んでいる中で面白く印象強かったお話の一つに、世界文化遺産でもあるスペインの「セゴビアの水道橋」のお話のこと。このセゴビアの水道橋の構想は紀元前80年(紀元前1世紀)頃の古代ローマまで遡るようなので共和政ローマ時代。そして、このセゴビアの水道橋を建造したのはトラヤヌス皇帝(在位:98年~117年)とされているので、所謂ローマ帝国時代の1世紀から2世紀初頭頃のもののようです。二段のアーチ119個を連ねた高さおよそ30メートル、幅4メートル、全長876メートルという巨大な建造物は、とても人間技では不可能で、きっと悪魔が作ったのだという伝承から「悪魔の橋」と呼ばれるようになったのではないかというものです。とりわけ、それに纏わる伝説物語が私には興味深いもので、悪魔と美しい娘の物語。
悪魔がセゴビアの町の美しい娘に恋をしてしまい熱心に言い寄る。たまたま水汲みに疲れてその白い腕の病める夜、娘は悪魔に、「もし明朝夜が明けるまでに、私の家の前まで水道をひいてくれるなら、そのお礼にあなたの言う事をきいてもいい」と返事をしてしまう。悪魔は大張り切りで一晩中、それこそ気狂いのようになって働いた。けれど娘は日の出とともに黒いつぶらな瞳をあけ、悪魔が最後のアーチに石を置くのを見てしまった。太陽の最初の光が、悪魔のしっぽを照らして輝いていたのです。
悪魔は約束通り一晩で完成させたと云う。けれど娘は見たので間に合わなかったのだと云う。そしてこの悪魔と娘の事件はセゴビアの法廷にまでもちこまれた末、結果は悪魔が日の出前に橋を架けることに失敗したという裁定で娘は救われた、と、ちょっと面白いお話です。この物語は『歴史のなかの 橋とロマン』という御本を参照させて頂きました。
世界遺産であるセゴビア旧市街と水道橋には、ゴシック様式のセゴビア大聖堂とアルカサルの古城もあります。アルカサルの古城がまたとても幽玄たる美しい佇まいなのですが、ディズニー映画の『白雪姫』のモデルにもなったお城です。行ったことなど無いのですが、映画や音楽の源泉を辿ることが好きなもので、遥かなる歴史を書物などを通して読んだり眺めたり。史跡巡りをしながら神話や伝承物語にも遭遇できるので愉しいのです。