フランス・レジスタンス詩人:ジャン・タルジューの詩 ★ 『きけ わだつみのこえ』 序文より
2011年 06月 28日
3月11日から3ヶ月以上を経過して遂に猛暑到来の季節になった。多くの方がこの東日本大震災でお亡くなりになり、多くのものが失われてしまった。その上、原発事故で命ある者までも不安な状態で、これは日本だけの問題ではないのでかなり深刻なこと。総理や東電の会見や責める声、反原発、脱原発、推進派の人々の様々な意見が毎日ニュースで賑わう。けれど、今も瓦礫は積まれ避難所生活の人々、全壊した家屋から新たな一歩を踏み出し始めた人々、放射能の危険にさらされながら作業されている人々...この大災害から助かった命ある人々を想う。家族を失った方も多いけれど、それでも生きて行かなければならない。漁業が出来なくなったから農業を始めるという60代の女性の姿をニュースで知った。60代になって今までまったく経験のないお仕事を始める。穏やかな語りのその女性はあまりにも強靭で尊い姿として私は涙が出てしまった。私にはそんな強さはないだろうから...。
4月頃だったかな?『きけ わだつみのこえ』を読んだ。岩波文庫のワイド版で。私は数ある岩波文庫の中でこの『きけ わだつみのこえ』はなかなか読めずにいたもの。結局読んだけれど、やはり読んでいて辛いし、20歳前後の若き命、ただ一度だけの青春時代という時間を戦争に捧げるのだと想うと。でも、編集顧問の東大教授でフランス文学者の渡辺一夫氏による序文の中の詩がおぼろげに残っていたもので、再読ではっきりしてメモに取っておいた。4月頃のブログで書こうかと思いながら何となく戸惑いもあり今日になってしまった。その詩はフランスのレジスタンス詩人であるジャン・タルジューが、1943年の『詩人の光栄』という詩集に収められていたものだそうだ。ジャン・タルジューのこの詩は第二次世界大戦中に刊行されたというのも驚く。フランスは連合軍ながらアメリカやイギリス軍とは違って、ドイツとはかなり激しい戦いがあり、ナチスの占領下の時期も経ての勝利国というなんとも複雑な重い歴史を抱えている。ゆえに、その時代を描いた映画も多く今も作られ続けるのだろう。レジスタンスに身を投じ若き命を失った人たちは世界中にどのくらいおられるだろう。戦争なんて必要ないと想うのに太古の昔から今日も果てしなく続いている。私はガンジーを尊敬しているので反戦云々とも少し違う。日本がこの大震災に遭った時、フランスとイギリス(アメリカも)はリビア戦が過熱していた。ヨーロッパの闘いの歴史もまた凄まじいものでかなり複雑怪奇...学びと思考の日々は続く。
生き残った人々は、何が判ればいい?
死んだ人々には、慨く術もない以上、
生き残った人々は、誰のこと、何を、慨いたらいい?
死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?
詩:ジャン・タルジュー 訳:渡辺一夫 1949年8月31日
※「わだつみ」とは「わたつみ」、「海神」という意味の古語だそうですので、なんとも・・・。また、未見なのですが映画化もされているそうです。