人気ブログランキング | 話題のタグを見る

あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

『はなのすきなうし』作マンロー・リーフ絵ロバート・ローソン★お花が大好きな愛しき子牛フェルジナンド君

『はなのすきなうし』作マンロー・リーフ絵ロバート・ローソン★お花が大好きな愛しき子牛フェルジナンド君_b0106921_1129436.jpg『はなのすきなうし』
作:マンロー・リーフ
絵:ロバート・ローソン
訳:光吉夏弥
発行:岩波書店
初刊:1936年

★アメリカの児童文学作家マンロー・リーフ (Munro Leaf:1905年12月4日~1976年12月21日)の名作絵本『はなのすきなうし』の初刊は1936年。挿絵はマンロー・リーフの友人である同じくアメリカの画家ロバート・ローソン(Robert Lawson:1892年10月4日~1957年5月27日)が担当しています。

舞台はスペイン。主人公であるフェルジナンドは幼い頃からお花が大好きでひとり静かにお花の香りを嗅いで静かに過ごしている愛らしい牛。他の多くの牛たちは闘牛場で勇敢に闘うことを夢に見て過ごしている。そんなある日、闘牛探しにやってきた5人の男性。他の牛たちは自分をアピールするために唸ったり威勢が良い。愛しきフェルジナンドときたら、まったく興味もなくいつもの場所でお花のにおいを嗅ごうと草の上に座るのだけれど、運悪くそこにはハチが居てお尻を刺されてしまう。痛くて飛び上がって大騒ぎとなったフェルジナンドは、マドリッドへ連れて行かれることに。

闘牛場にひきだされたフェルジナンドは、闘牛士たちがいくら躍起になって挑発しようが、一向に闘う気配はない。けれど観客席には胸や帽子に芳しい花をつけたご婦人がたがいっぱい。フェルジナンドはその芳香をうっとりと嗅ぐばかり。闘牛としてまったく役に立たないフェルジナンドは無事、もとの平和な牧場に帰され、お花に包まれた静かなしあわせな生活に戻れました。ああ、良かったね!フェルジナンド君♪

初刊の1936年はスペイン内戦真っ只中であったために、かなりの論議を醸し出したそうです。発禁処分にも遭っていて、ナチスドイツにも燃やされてしまい、日本でも1941年(昭和16年)に『花と牛』という題で出版された折も、当時の軍国主義者たちから戦争を否定しているとして猛烈な攻撃を受けたという。けれど、いまなお、この作品が世界中で読まれ愛され続けている。お花を愛することは平和を愛することと繋がっていると思います。

人ぞれぞれの解釈がありますが、私は"武器よりお花を!"という性質なので、とてもこのフェルジナンドの気持ちが分かるようで、また人間世界に置き換えた場合でも、「女の子だからこうありなさい」「男の子なんだからもっと強く」「みんなと仲良く遊びなさい」「今の日本はこうでなければならない」...云々と大人たちは子供をある枠にはめようとすることも多い。他の人と違ってもいいじゃないのって子供の頃から思って生きて来た私はなおさら、このフェルジナンドが同士のようにさえ感じられるのです。この子牛のフェルジナンドのお母さんも寛容で素晴らしいです。我が子の感性や好きな世界、性格を優しく受け入れている。一人で遊ぶことの楽しさもあれば、お友達と遊ぶ楽しさもある。私は誘われないと外で遊ぶ子供ではなく、いつも一人でお人形遊びや少女マンガ(悲しいお話が子供の頃から好きでした)を読む時間を優先していたものでした...と回顧♪
by claranomori | 2011-01-21 11:27 | 童話・絵本・挿絵画家