『ママの想い出』監督ジョージ・スティーヴンス★長女の回想で家族の悲喜を綴る家庭劇の名作(1948年)
2010年 12月 21日
ママことマルタ(アイリーン・ダン)とパパことラース(フィリップ・ドーン)、そして長男のネルス(スティーヴ・ブラウン)、長女キャトリン(バーバラ・ベル・ゲデス)、次女クリスティナ(ペギー・マッキンタイア)、三女のダグマー(ジューン・ヘディン)の6人家族の物語。長女キャトリンの回想で綴られる。大工のパパのお給料を毎週土曜日にママが仕分ける。決して裕福ではないけれど両親と子供たちはその状況を毎週見て知っている。ママが「これで銀行に行かずに済むわ」と云う言葉に子供たちは安堵する。けれど、家庭の事情は意外な出来事で予定変更となるもの。まだ幼い末娘ダグマがある日高熱を出し入院手術という事態。小さな少女は家族と離れて病室で寝ている。ママは「一緒に居てあげる」と約束してくれた。ところが、手術は成功したものの明日まで面会謝絶。まだ幼い娘がどんなに寂しい想いをしているかと気が気でないマルタは、掃除婦に変装して病室に忍び込む。ダグマもママの顔を見るとホッとするのだった。また、長女と次女は高校生でキャトリンはもうすぐ18歳になり卒業。子供たちは日々成長している。パパのお仕事もストで収入が減ってしまい「小さな銀行」と家族が呼んでいる宝箱の中のお金も空っぽに。でも、銀行に貯金があるから子供たちはそんなに深刻でもない。
この家族はノルウェーからサンフランシスコへ移住した人たち。その伯母や叔父たちも個性的で、とりわけ声の大きな足の不自由なクリス伯父さんの存在も重要で、病死の後残された手帳で分かることに、この伯父さんは体の不自由な子供たちの医療費などを長年払って来たのだった。なので、まったく遺産を残すことはできなかった。でも、キャトリンはそんな伯父さんを誇りに想えるようになってもいた。『若草物語』のジョーと少し似た状況で、高校を卒業後は作家の勉強をしたいと作品を書き続けていたキャトリンながら、なかなか採用されない。有名な女流作家がお料理本を執筆中と知ったママは、ノルウェーの秘伝のお料理のお話と交換に出版社を紹介してもらい、キャトリンは家族のことを書くように奨められる。ママは「パパのことを書きなさい」と云うけれど、ママの事ばかり書いてしまうのだった。そうして完成した作品が『ママの想い出』という作品。このご本は採用され賞金も頂けた。キャトリンは家族のために銀行に預けるように両親に渡す。パパとママは子供たちに本当の事を話す時がやって来た。銀行に預金どころか口座も無いのだった。「小さな銀行」の宝箱の中のお金が全財産だった。子供たちに心配させたくないゆえの両親の嘘であった。嘘がこんなに美しいこともある!時に喧嘩もする、悲しい出来事も辛いことも、でも、助け合い想い合うことで笑顔が生まれる。素敵な家族なのである。荒んだ社会、家庭崩壊などと聞こうとしなくても聞こえてくる声。アメリカも今はこの映画の舞台のような時代ではないけれど、時代を超えて尊いものを古き映画から教えて頂けることをしあわせに想う。ママ役のアイリーン・ダン!とにかく素晴らしいのでした☆
1948年・アメリカ映画
監督:ジョージ・スティーヴンス 製作:ハリエット・パーソンズ
原作:キャスリン・フォーブス 『ママの銀行預金』
原作戯曲:ジョン・ヴァン・ドルーテン 脚本:ドゥウィット・ボディーン
撮影:ニコラス・ムスラカ 音楽:ロイ・ウェッブ
出演:アイリーン・ダン、バーバラ・ベル・ゲデス、オスカー・ホモルカ、フィリップ・ドーン、ペギー・マッキンタイア、ジューン・ヘディン、スティーヴ・ブラウン、エドガー・バーゲン、エレン・コービイ、サー・セドリック・ハードウィック