『ルネ』(1802年)孤独な青年ルネ 著:フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン★フランス・ロマン主義の父
2010年 11月 09日
シャトーブリアンの『ルネ』(1802年)という小説が大好きなのですが、この作品は『アタラ』(1801年)から続くものでもあるのだけれど、私の好きな「ロマン主義」、とりわけ「フランス・ロマン主義」というと欠かせない作家であり作品のひとつがこの『ルネ』なのです。
ルネは生まれると同時に母を失い、孤独と瞑想とメランコリーの中で、ただ姉アメリーだけを慕い育つ。幸福を求めて旅に赴くが挫折する。自殺を考えるが姉に引き止められる。やがて、修道院に入った姉アメリーは弟ルネを愛していたことを無意識の中で叫ぶのであった。彼ら二人が姉弟の間を越えた愛情(近親相姦)を抱いていたことに気づいたルネ。暗い宿命に囚われ絶望のなかヨーロッパを捨てアメリカへ渡る。
この激烈な青春のあがき。孤独とメランコリーに心打たれる。壮麗な美文は「言葉の魔術師」とも讃えられ、逆に、その誇張された文体と自己讃美をスタンダールは「偽善者の王」と呼んだとも。どちらにしても、解放された自我の悲劇を美麗に描いたシャトーブリアンは、「フランス・ロマン主義の父」となったのである。殊に青年層に大きな共感を生み、「ルネ病」あるいは「世紀病」と呼ばれ流行ったというけれど、きっと、私もその時代に生きていればそれらの病に至っていたであろう。