『砦の町の秘密の反乱』 著:ニーナ・ボーデン★12歳の少女ジョーの垣間見た異国での秘密の革命
2010年 10月 17日
両親(母キャリーと義父アルバート)と4人の子供たちが、休暇に訪れた外国の古い砦の町でのできごと。12歳の少女ジョーは、その土地の少年アレクシスと友達になる。その少年の父親は政治的な理由から国外に亡命中。その異国は独裁政権下の国で、ジョーも兄のチャーリーも理解できないでいる。でも、ジョーはアレクシスに好意を抱いている。その少年アレクシスは親の居ない暮らしながら、亡命している父親のことを誇りに思っている美しい凛とした少年。そんな中、海軍による反乱計画によりアレクシスが巻き込まれてしまい、その事で兄妹たちはようやく独裁政権下の国で起こっていることを子供ごころで理解する。反乱は未然に防ぐことになったけれど、少年が捕えられるという衝撃的な事件は、少女ジョーにとって忘れることのできない体験となり、また、そのショッキングな休暇は、義父であるアルバートへの不信感も解けてゆき、ジョーを始め、兄妹たちの成長をも描いた、児童文学作品として画期的な作品で、著者ニーナ・ボーデンは自ら「推理・政治小説」であるという。
このようにニーナ・ボーデンは語っている。少女ジョー(わたし)は、あの時のことを考えると息がつまりそうになり、からだがちじむような思いをする。以前よりやわらいだけれど、今でもそんな気分になる。と、語っている。
この義父アルバートの言葉を胸に刻みながら、惨事は避けられたものの、友人が死んでいたかもしれないと思うと怖いだろうし、納得しきれないものもあるのは当然だろう。それでも、父を亡くして母の再婚という環境にもまだ馴染めずに、疎外感のようなものを抱いていた12歳の少女ジョーは洞察力もあり、小さな妹思いで優しく賢明な少女。自分の赤毛でそばかすの陽に焼けても赤くなるばかりの容姿にコンプレックスを持っているようなのだけれど、私も子供の頃から赤毛で陽に焼けると顔も髪も赤くなるばかりでそばかすも多かった時期(中学生の頃が最も顕著だった)を今でも思い出すので、なんだか少女ジョーは赤毛同盟のお友達のように感じたりしながら再読していた。そして、以前読んだ折はあまり私もお話がよく分からず、内容も異質だったので面白いと思えず印象が曖昧だったけれど、再読して良かったと思える。
この地中海の異国とはギリシャであり、コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の作品たち、とりわけイヴ・モンタン主演での政治サスペンスの3部作『Z』(1969年)『告白』(1969年)『戒厳令』(1973年)を想起していた。コスタ=ガヴラス監督の娘であるジュリー・ガブラス監督による『ぜんぶ、フィデルのせい』(2006年)も大好きな映画なので、ジュリー・ガブラスの少女時代を勝手に想像したり。ギリシャの激動の歴史を詳しく知らないけれど、歳を重ねてゆく中で、こうして文学や映画などから教えて頂いている。コスタ=ガヴラス監督作品の初見は『戒厳令』であり、シャンソン歌手としても国際俳優としても名作の多いイヴ・モンタン主演映画の初見も『戒厳令』。10代の折でさっぱり意味も分らずテレビで観たのだけれど、モンタンの表情が焼きついてしまって、そこからモンタンの出演映画を追うようになり、今でもよく観返すし、モンタンの歌声も頻繁に聴いています♪