あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『クララからの手紙』著:トーベ・ヤンソン★短編集の中の少女たちはトーベ・ヤンソンの少女時代を想わせる

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★ムーミンで有名なトーヴェ・ヤンソン(トーベ・ヤンソン)は、本名トーヴェ・マリカ・ヤンソン(Tove Marika Jansson:1914年8月9日~2001年6月27日)で、フィンランドのヘルシンキ生まれの画家であり作家でもある。30年以上の公私に渡るパートナーでもあったトゥーリッキ・ピエティラ(彼女も芸術家である)も去年他界され淋しい。けれど、彼女たちのクルーヴハル島での生活や美しい自然の風景、またトーベ・ヤンソンの描く作品の中の愛しき登場人物たちは生き続けてゆく。トーヴェ・ヤンソンは優れた児童文学作家でもあり絵本作家でもあるけれど、小説や短編集も素晴らしい!

この『クララからの手紙』(1991年)は、ユニークかつ独創的な文体で綴られた短編集で、老境に入ったクララが宛てた手紙という淡々とした構成。中でも『夏について』の少女は、まるで自伝『彫刻家の娘』(1968年)の続編的(後日談)とも云えそうなトーヴェ・ヤンソンの少女時代を垣間見るかのようで大好き!屋根裏に秘密の小部屋を作り、初めて深い水の中を泳ぎ、ボートを漕いだり、韻のふみかたを発見したり、薪納屋の壁に絵を書いたりする。特にボートを漕ぐ練習の場面などクスクス笑ってしまえる程愉快。

ボートをこぐ練習をする。練習するところを見られたくないので、毎朝みんなより先に起きる。かしこく、しかもいちずでなければならない。

母シグネとトーベは妥協を許さない強い意志や快活さも似ていたようだけれど、母シグネの颯爽としたおてんば娘ぶりとは違う。少女トーヴェも、のびのびしているけれど、母のようなガールスカウト活動には参加せずに、ひとり遊びを好む空想家の少女の姿を想う。けれど、ボートを漕ぐ練習などみっともなくて人には見せられぬ!という幼き少女に既にプロ意識のようなものがある。これらは、やはり母シグネからの影響がとても大きいのだろう。

また、『カリン、わが友』の美しい敬虔な少女カリンを見つめる少女の姿も愛おしい。相変わらず美しく寡黙で真面目なカリンと、随分長い年月を経て再会した折の描写も印象的。

その頃、ピエール・シェーファーやクラウス・シュルツェなどの電子音楽が世に出た。銀河のような荒涼を思わせる抽象的な音楽にわたしはすっかり夢中になり、カリンに聴いてほしいと思った。しかし、あのレコード盤をかけるべきではなかった。

この二人の少女の様子を思い浮かべるのが大好き!「わかった」「これだったんだわ。つぎに神の声が続くのよ」と再度かけてほしいと願うカリンと、銀河の震える余韻に呑み込まれ、やがてゆっくりと沈黙の中に消えてゆくと感じる二人で鑑賞している電子音楽の世界であるけれど、二人の少女の時間軸にはそうとうのずれが生じているのである。このピエール・シェーファーとは、ピエール・アンリと共に、フランスの偉大なるミュージック・コンクレートの創始者である音楽家ピエール・シェフェールのことで、クラウス・シュルツェとは、これまた偉大なクラウス・シュルツ(私も好きなのですが)であり、ドイツの電子音楽(ジャーマン・ロック~プログレ等)に欠かせないアーティストのお一人なので、トーヴェ・ヤンソンの作品の中で彼等の名が登場するのでとても嬉しく、その光景を想像してしまいます。

他にも、『エンメリーナ』の中のこの世の少女なのか幻想なのか...と思わせる不思議な浮世離れした少女エンメリーナ、また、トーヴェ・ヤンソンお得意の魅力的な老人たちの姿もある。この『クララからの手紙』 は、軽々と時間軸を浮遊するような柔和な短編集なのです。

※このブログ名でもある「クララの森」のクララには幾人もの大好きなクララが居ます。ある一人の少女のことではないのですが、気がつくと愛しきクララたちが。この今は老女であるクララもその中のお一人なのです♪
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by claranomori | 2010-10-16 03:01 | 本の中の少女たち・少年たち