『美女と野獣』(1946)監督:ジャン・コクトー主演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ原作:ボーモン夫人
2010年 08月 05日
原作の『美女と野獣』は、イギリスで1757年にマダム・ルプラン・ド・ボーモン(ボーモン夫人)が『子どもの雑誌』あるいは『子どもたちの宝庫』に纏めたものの中に収められたお話。前年の1756年にフランス語で出版されていたそうだ。ボーモン夫人は1748年から1761年の帰国までの英国滞在、とりわけ子供たちの教育事業に打ち込んでいた時期であり、40冊程の作品を書き上げ、後に傑作と謳われる作品たちは、このロンドン滞在時に書かれたものである。このお話は「妖精物語」とも云える「おとぎ話」。この原作をジャン・コクトーは自ら脚本を手掛け、とんでもなく美しい、幻想的かつ優美な詩的映画として世に出されたもの。
最強のスタッフが揃っていることに今だと気づく。技術顧問あるいは撮影アシスタント的な役割をルネ・クレマンが担当している。あの『禁じられた遊び』を監督する以前の1945年(この年に『美女と野獣』の撮影開始)。また、美女ベル(ジョゼット・デイ)に求婚する乱暴者の青年アヴナン、野獣、王子の三役をこなすジャン・マレー。コクトーはこの美しきジャン・マレーのために構想を練ったと云われるもので、アンリ・アルカンのカメラワークがさらにマレーの美を際立たせている。コクトーはアンリ・アルカンに「画家フェルメールの光の使い方で撮ってほしい」と注文したという。そして、ベルや野獣の豪奢な衣装を始め、神秘的でファンタジックな野獣のお城などの美術担当はクリスチャン・ベラール。以前からコクトーの舞台美術なども担当してきた画家であり、ファッション・デザイナーでもあるコクトーの旧友である。さらに、ジョルジュ・オーリックの音楽も私はいつも相性の良さを感じているお気に入りの音楽家のお一人だし、ベル役のジョゼット・デイの神々しさも焼きついたまま。ジャン・マレーとジョゼット・デイは『恐るべき親達』(1948年)でも再び共演された。
1946年・フランス映画
監督・脚本:ジャン・コクトー 製作:アンドレ・ポールヴェ 原作:マダム・ルプラン・ド・ボーモン(ボーモン夫人) 撮影:アンリ・アルカン 美術・衣装:クリスチャン・ベラール 音楽:ジョルジュ・オーリック 技術顧問:ルネ・クレマン 出演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ(ジョゼット・デエ)、マルセル・アンドレ、ミシェル・オークレール、ミラ・パレリ
※関連:「大好きな映画監督VOL.4 ジャン・コクトー:JEAN COCTEAU」