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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『少年少女』 作:アナトール・フランス 訳:三好達治 挿絵:エディー・ルグラン

『少年少女』 作:アナトール・フランス 訳:三好達治 挿絵:エディー・ルグラン_b0106921_11131277.jpg★フランスの文豪アナトール・フランス(Anatole France:1844年~1924年)が1886年にパリのアシェット社から刊行された、『少年少女』という19篇の短いお話からなるもの。初刊の題名は『我々の子供たち』と題された上下巻からのものだったそうだ。その下巻の題名が『少年少女』で日本語訳の折にこの題となったとあとがきに記されている。私は馴染みの深い三好達治訳で手にしたのだけれど、もう大人になっていた。そして、この小さなご本を10数年ぶりに読み返し感動している。もう毎日がこんな具合で過ぎてゆく。ちょっとばかり今、バランスの均衡が不安定でまた風邪気味。何故、私はすぐに風邪をひいてしまうのだろうか。きっと、精神力や気力、また自己管理能力が欠けているからだろうと想う。考えなくてもよい「ここではない、どこか」へ想いを馳せることが多く、でも「あなたの場所はここよ!」と現実の大きな壁が現前する。そんなまだまだ人生という荒波の真っ只中の私。それでも、私なりに少しは乗り越えて(あるいは伴って)歳だけ重ねているとも想うのだけれど。

読みやすく品性のある文体。子供の頃にも読んでみたかったな。今の私の心に響く数々の少年少女たちの日常風景。少女カトリーヌと弟ジャンを中心に少年少女たちが主人公。中にはカトリーヌのお友達でもあるお人形も出てくるし、野の草花で花冠や花環を作って遊んだりしている。このお話の中の子供たちにすんなり私の子供時代の風景が重なる。過ぎ去りし幼き日々なのにありありと。輝くようにそれらの風景が浮かぶ。ヴィム・ヴェンダース映画に夢を映像化するようなお話のものがあったけれど、そのような機械があれば素敵かなあ...とか。私の脳内あるいは心象風景として輝く場面たち。たかが、想い出と記憶による不思議な風景でもある。
『少年少女』 作:アナトール・フランス 訳:三好達治 挿絵:エディー・ルグラン_b0106921_035474.jpg
『カトリーヌのお客日』の中の少女カトリーヌのお遊び。お客様たちはみんなお人形たち。カトリーヌは一人ですべての会話をこなす。そして、器量良しな贔屓しているお人形がいる。そんな少女カトリーヌの気持ちがとってもよく分かる。でも、それらの遊びのなかで、次第にみんなに公平にしなければいけないのだということも学習してゆく。それは誰かに云われるでもなく、カトリーヌの心が自然とそのように感じ始める。面白いくらいに私もそうだったので苦笑してしまうけれど。お話の最初に個性的な挿絵(版画)が載っていて、その挿絵はエディー・ルグランというお方のもの。上の絵はその中のひとつ『カトリーヌのお客日』よりスキャンいたしました♪
by claranomori | 2009-11-23 00:48 | 本の中の少女たち・少年たち