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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『マリアンヌの夢』と『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』 作:キャサリン・ストー(CATHERINE STORR)

『マリアンヌの夢』と『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』 作:キャサリン・ストー(CATHERINE STORR)_b0106921_23261821.jpg
イギリス・ロンドン出身の作家であり精神科医でもあるキャサリン・ストー(CATHERINE STORR)は児童文学を数多く書かれている。その中で私にまったく異なる作風として印象深く残っている、好きな作品である『マリアンヌの夢』(1958年)と『かしこいポリーとまぬけなおおかみ(ポリーとはらぺこおおかみ)』(1955年)のご本のこと。

このお話の主人公である少女マリアンヌは10歳。お誕生日を迎える前に病気で入院してしまうことになる。9週間もの間外出できない。ある日、ひおばあちゃんの裁縫箱から鉛筆を見つけ絵を描き始める。家を描くとそれが夢の中に現れる。男の子マークを描くと彼も夢に...。けれど、その自分で描いた家に入りたくても入れない。また、そのマークという男の子は現実に病気で外にでることができない。目のある岩(石)が不気味な存在で怖い。この夢の中のマークというのは実は病気の少女マリアンヌ自身である。現実の不自由さや鬱憤を投影しているのだろう。キャサリン・ストーはこうした作品をいくつか書かれていて、それらは「心理ファンタジー」と称されるもの。とても素晴らしい!
『マリアンヌの夢』と『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』 作:キャサリン・ストー(CATHERINE STORR)_b0106921_041314.jpg
『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』は『マリアンヌの夢』と同一作者とは思えない程作風が異なる。こちらは児童文学と云ってもさらに年少向けに書かれたもののようながら、とっても面白い!グリム童話の『赤ずきん』の主題を逆転させたもの。なので、主人公は幼い少女ポリーと怖い狼。ところが、このお話での狼はまったくポリーちゃんを食べるどころか、食いしん坊の狼はいつもかしこいポリーちゃんに上手くかわされてしまう。差し出されたものを食べてお腹がいっぱいになる、どこかすっとぼけた感がある。決め台詞のように「きょうこそ、おまえを食べてやる!」と云うけれど、怪我ひとつしないし、ポリーちゃんが助けてあげることも。なんともまぬけな狼。でも、動物園の檻に入れられた狼が涙をこぼしながら、「おれは、一度でいいからかんげいされたかったんだ。」と少女に語ったりする。幼い少女にとってまぬけとは云っても獰猛な狼。けれど、なにかしら二人の間には不思議な関係で成り立っているものがある。なので、ポリーちゃんが食べられることはないと分かっているのだけれど、どうするのかな?って気になりながら愉快に読んでゆける。

私はヴィジュアルより活字をより好むのだと想う。「ファンタジー」という言葉の捉え方は一言では難しい。甥たちの時代にゲームやアニメーションは不可欠なもの。それもファンタジー世界。私はそれを否定する気はまったくない。けれど、できれば文字を読んで、お話を読み進めてゆく中のあの感動をも知っていて欲しいと彼等に願いながら、私の好きな児童書を手渡してみたりしてきた。冒険譚はやはり好きなので、読み出すまでは興味を持てなくても「面白かったよ!」と云ってくれるととても嬉しい。そんな彼等も大きくなった。私も毎年歳を重ねる。けれど、やはり活字好きらしい。映画も音楽も大好きだけれど、結局は同じようでもある。読んで心に描くもの、聴いて浮かぶ風景、美しい映像を観て、さらに思考することの意味は私には大きい。考えること、想像することってやはり何歳になっても止めたくはない。写真よりも絵の方がずっと好きなのは、そこにも「ロマン」を求める心が関係しているように想う。時空を超えるって大好き!今ばかりじゃ窒息してしまう。ある人は「童話」や「児童文学」というと幼稚に想われるかもしれない。そんなことはない。私は「子供の情景」が好き。なので、少女や少年が心から離れることはない。「ロリコン」と云われようがどうでもいい。私自身の人生の糧となっているのだから。私の心がいつまでもファンタジーを求めていてくれたなら、そんな幸せなことはないとも想える☆
by claranomori | 2009-10-07 23:50 | 本の中の少女たち・少年たち