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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『みだれ髪』 作:与謝野晶子 装幀:藤島武二 ★ 明治ロマン精神の大輪の花

『みだれ髪』 作:与謝野晶子 装幀:藤島武二 ★ 明治ロマン精神の大輪の花_b0106921_8334612.jpg
与謝野鉄幹が『紫』(明治34年)を新詩社より刊行。上京した晶子(鳳晶子)を導き、『みだれ髪』(明治34年8月)を刊行。『みだれ髪』は与謝野晶子の処女歌集である。この生涯一途に鉄幹を愛し続けた少女のような与謝野晶子。

鉄幹・晶子の文学的結合は、明治20年代「文学界」のロマン主義以降のロマン精神の大輪の花となった(上田博氏の文献より)。このように、『みだれ髪』は鉄幹の『紫』との相互を知るとさらに美は深まるもの。そもそも『みだれ髪』との提案は晶子の髪型を見て鉄幹が詠んだことにあるようだ。

私の好きな日本文学はやはりロマン主義~浪漫派という中に多くある。そして、女流作家が好きなのも傾向。でも、僅かな偏りの中のこと。ドイツ~フランスとヨーロッパで開花したロマン主義は18世紀から19世紀。遅れて日本の文学にもその浸透が開花してゆく様が好き。

『みだれ髪』の装幀は藤島武二。アルフォンス・ミュシャの影響が大きいのは一目瞭然。彼等はアール・ヌーヴォーの影響を受けている。つつじ色の長い髪に蔽われた顔はハートで囲まれている。そのハートを左上から右下へと矢が貫く。ハートの先からは三輪の花が咲き、ハートから零れるように、《ミだ礼髪》と緋色の文字。優美である。藤島武二の『明星』の表紙も素敵。このように、やはり美しい作品が美しい装幀や挿絵、デザインを伴い、さらに美を極めるのだと痛感する。

この初版本はさらに美しい!私の持っているものは文庫だけれど。ヨーロッパかぶれした子供であった私がようやく日本の文学に興味を抱き始めたのは随分遅い。そして、まだまだ読みたい作品が課題とされている。ふと思い立ったのは、明治や大正という時代が好きな理由は簡単なことだった。西暦に直してみればもっと分かりやすい。『紫』も『みだれ髪』も刊行された年は1901年である。20世紀の始まりである。最初にそのようなことを思ったのは、ニーチェの生きた時代を考えた折のこと。”日本では明治時代なのだ”と「明治」を印象付けることになった。また不思議な符号ながら、ニーチェもオスカー・ワイルドも死に至った年は1900年。その翌年に日本のロマン主義はさらに飛翔してゆく時代だったと思うと胸躍る。

ややこしいけれど、日本文学で「ロマン主義」というのと「浪漫派」とは時代が異なる。「ロマン」を「浪漫」としたのは夏目漱石だそうだ。そのような流れ、また批判を受けてもいた時代に興味は尽きぬ。「ペンは一本、箸は二本」と文筆で生計を立てる困難さを物語る斎藤緑雨というお方の言葉もある。ましてや、女の書物など!という男性の影になることこそ女の美徳とされてきた時代。けれど、女性が表現し始めたという時代でもある。古い因習の壁が如何に堅固なものであり、社会的偏見に立ち向かうこの時代の女流作家や活動家たちの熱き想いを想像し学ぶことは大きい。与謝野晶子のことは、まだ追記いたします。文化学院のマダム・アキコとしての晩年もとても好き。また、あの『源氏物語』を生涯3度も訳したお方。やはり情熱と志を貫いた素晴らしい女性である☆
by claranomori | 2009-10-04 09:36 | 愛の花束・日本の抒情・文学