★ブライアン・デ・パルマ監督の1973年映画である『悪魔のシスター』を先に観ていたので、リメイクされると知り楽しみにしていた。噂ではクローネンバーグ監督でというお話もあったよう(そちらを観てみたかった!)。でも、主演が10代の出演作から追っている好きな女優さまであるクロエ・セヴィニーとルー・ドワイヨン(ジェーン・バーキンとジャック・ドワイヨンの娘さまでジェーンによく似ている)で、劇場へは行けなかったのでこの春にレンタル屋さんでお借りして観たもの。端的に云うと、やはり『悪魔のシスター』の方が断然良かった。監督お得意の画面を二分割しての映像も多用され、主役の姉妹役であるマーゴット・キダーもとても可憐で素晴らしく、また怖くもあった。けれど、どちらも最後になんとも云えぬ物悲しい余韻を残すもので、少し感じ方は異なるけれど、やはり私はその余韻が悲しくも美しいものとして残っているので観て良かったと想う。
主な登場人物の名前が異なっていたのでメモしておこう。デ・パルマ版の姉妹であるダニエラとドミニク(マーゴット・キダー)、女性記者グレース(ジェニファー・ソルト)、精神科医のエミール・ブルトン(ウィリアム・フィンレイ)。ダグラス・バック監督のリメイク版の姉妹のアンジェリクとアナベル(ルー・ドワイヨン)、女性記者グレース(クロエ・セヴィニー)、精神科医フィリップ・ラカン(スティーヴン・レイ)。この姉妹は腰の辺りで引っ付いているシャム双生児として生まれ過ごしていた。けれど、その姉と医師は恋仲となり結婚する。この医師がとても重要な役柄でかなりの変質的な人物で、その点も断然ウィリアム・フィンレイの方が不気味であった。この医師は姉妹を切り離す手術を施した人物でもある。後に、離婚しているけれど執拗に付き纏う辺りも気持ち悪いものだった。こういうマッドサイエンス的な様相はやはりデ・パルマ作品の方が色濃く凄みもあったように想う。手術後、妹は死んでしまうのだけれど、自分のために死んでしまった妹に申し訳ない気持ちを抱き続ける姉。傍目には、妹は生きていて、手術後精神を患い凶暴な性格となったことになっていた。それも医師による操作であり特殊な薬物を処方され飲んでいる。医師なりの偏愛なのだろうけれど。そのお薬が切れると凶暴な妹の人格が姉に移行するもののようだ。ちょっともう一度観ないと不明な部分も多いし、記憶も定かではなくなっている。デ・パルマ版の最後に、モノクロームの古い記録映像が流される。それは精神病院の模様で、その中に少女時代の姉妹(ふたりがくっ付いていた頃)の姿もある。いつも一緒に行動していたふたりの表情は普通に愛らしいと思えた。また、リメイク版の最後はルー・ドワイヨンとクロエ・セヴィニーがまるで姉妹であるかのように髪型もお洋服も同じで歩いてゆく後姿を映し出し終える。そんな現実と妄想世界が混合する中、何か物悲しさに美しさを感じた。私は姉妹ものが好きだということもあり、また、70年代のデ・パルマ映画に好きな作品が幾つかあるのは、すべて主演の女優さまに少女性を帯びたお方が多いという理由もかなり大きい。往還する女と少女♪
※これはサントラ盤より。音楽はバーナード・ハーマンなので、やはり意図して作られたと想われるヒッチコックの引用(『サイコ」や『裏窓』)も見られる『悪魔のシスター』をもう一度また観たいと今想う。