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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『もう森へなんか行かない』または『月桂樹は切られて』エドゥアール・デュジャルダン(EDOUARD DUJARDIN)

『もう森へなんか行かない』または『月桂樹は切られて』エドゥアール・デュジャルダン(EDOUARD DUJARDIN)_b0106921_5231066.jpg
『もう森へなんか行かない』というフランソワーズ・アルディの曲(歌)を知ってから随分と年月を経て知った小ロマン小説の『もう森へなんか行かない』(原題は『月桂樹は切られて』)。この長く”幻の書”とされていた作者はエドゥアール・デュジャルダン(EDOUARD DUJARDIN)。1971年に刊行された和訳で読み、ここ数日の頭の中でまたよみがえって来た。もうアルディの曲と対となって私の心に居るのだろう。私はこうした繋がりや発見をしては喜び生きている。ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』と深い関わりのある小さな書。すぐに読み終えてしまえるものながら、まるで主人公の青年たちとご一緒に過ごしていたかのような奇妙な感覚が残る。この初刊は1887年で僅か420部というもの。フランス文学の流れの中でも紹介されずにいた、フランス本国で埋もれていた書。それが再販されたのは35年を経た1922年のこと。私の好きな英国文学とフランス文学が繋がる場面でもある!ジェイムズ・ジョイスがフランスでこの書を見つけ、友人のヴァレリー・ラルボーに紹介したという。ラルボーは最初はジョイス程の感動を示さなかったそうだけれど、ラルボーによって生き返ったご本。しかし、ラルボーはその後、病気から活動は途絶えてしまう。この小ロマン小説はまたしても忘れ去られていた中、奇跡的な2度目の復活。それは1968年!アルディの『もう森へなんか行かない』が世に出た同年のこと。ああ、愉し!

そして、私個人の好きなロマン逍遥は各国入り乱れて大騒ぎとなる。19世紀の幕開けのようなノヴァーリス。ゲーテを忘れるわけはない。キルケゴールやショーペンハウアー、そしてニーチェ。フランスはこれらのドイツ・ロマン主義や英国文学からの影響を受けてフランス・ロマン主義の時代へ。スタール夫人やシャトーブリアンに始まる。そして、ユゴーやバルザック、デュマやスタンダール、ミュッセもいいな...そして、ボードレールやネルヴァル。ヴェルレーヌにランボー。ジョルジュ・サンドも。ロシア文学だとツルゲーネフやドストエフスキー、トルストイもいる。ああ、イプセンもいるし、19世紀末英国にはオスカー・ワイルド!!私の生まれる遥か彼方の方々や作品、登場人物たちが共に今ここにいることの喜びに心奮えるのだ。古典を継承しつつ忘れられていた音の響き。抒情の復活である!これこそ私の最も好きな”ロマン”の所以かも知れない。よく分からないけれど、エドゥアール・デュジャルダンやジョイスの「内的独白」という形体は好きだし、ロマン派の社会や現実とのズレから孤独や幻想世界へ誘う心の漂流が好き。”生きる”ために”苦しむ”。当たり前のことのように今は思える私。社会とのズレの大きさは時に疎外感ともなる。けれど、私の心のおもむくままに。どんなに人生が苦しく嶮しくとも、生きるため、幸福を、人生謳歌するためには目を背けるわけにはゆかない。受け入れよう。そして、出来るだけ”美”へと昇華しながら小鳥のさえずりや草花の美しさに微笑んでいたい♪

※上の挿絵(挿画)はアリス・ラーフリンというお方によるものです。


by claranomori | 2009-06-14 05:27 | 19世紀★憂愁のロマンと美