あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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オルレアンの乙女の使命★『戴冠式のジャンヌ・ダルク』 絵:ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル

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★この絵は1854年、オルレアンでのジャンヌ・ダルク記念祭で初めて公開されたという、ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル(Jean Auguste Dominique Ingres)による有名なもの。そして、オルレアンの乙女が聞いた、「王太子シャルルを戴冠させてフランス王位につけよ」という天の声を、深い信仰心故に、その神のお告げに従い軍隊を率いて、かなりの劣勢であったにもかかわらず見事にオルレアンを解放し、それのみならず「ランス大聖堂でのシャルル7世の戴冠式を行った」のである!輝かしきジャンヌ・ダルクの栄光の瞬間を絵にしたものを眺めては、その勇敢なお姿や崇高さと共に浮かぶ哀しみが付き纏うのだけれど。

17歳の少女がフランスを救うために神のお告げによってやって来たというお話をシャルル7世と初めて会った時には信じてはもらえず、査問会が開かれた。シノンのお城での初めての王との会見は1429年2月、オルレアンの解放は同年の5月、そして、戴冠式が7月である!フランスとイングランドの100年戦争。この時期のフランスは明らかに絶望的な状況であったとされている。当時のフランスの武将たちはオルレアンの解放を機に、ノルマンディ攻撃の続行を望んでいた。戦争の最中、戴冠式よりも敵を倒すという武将たちの主張は真っ当な気もするけれど、ジャンヌはひとり強靭にも反抗し続け、ランスの進撃を決行させてしまう。天晴れである!この辺りから、色々と読み漁り私の頭の中は未だに愉快な歴史模様に混乱させられ続けているのだけれど、ジャンヌの、オルレアンの乙女の使命は見事に果たされたのだ。ランス大聖堂でシャルル7世の戴冠式が行われるということの使命、そして、その歴史的事実の持つ意味は大きい。敵国イングランドに与えた打撃のみならず、驚くべきことに敵はシャルル7世の実母である王妃イザボー・ド・バヴィエールでもあったというのだから!僅か14歳でフランス王シャルル6世の妃となったお方である。フランスの歴史の中でも悪名高き女性でもある。なかなか愛らしい容姿の少女であったようだけれど、心の中はかなりの野心を持つ異常としか思えないことがらを行い続けた恐ろしい女性であった。息子を殺害する企てまでしていたという。ジャンヌ・ダルクはそのフランス王妃の策略を見事に打ち砕いたのでもある。王妃イザボー・ド・バヴィエールは、娘カトリーヌ王女をイギリス王ヘンリー5世の妻として、いわば娘とフランス全土を献上するという1420年のトロワの和議を結ぶ。結局のところ、王妃は自身がイギリスとフランスの両国を支配しようというものだったのだろう。この辺りはシェイクスピアの『ヘンリー五世』でも描かれている。しかし、ヘンリー5世、シャルル6世もこの和議の2年後に死去される。そこでイギリスは生まれて1歳にもならない王子ヘンリーを、そして、王太子シャルルも我こそが正統な継承者であると宣言した。当時のフランスにおいて二人の国王を名乗る者が存在した。そんな状況に登場したのがジャンヌ・ダルクであった。この絵のジャンヌには神に選ばれし者の円光が見られる。ジャンヌの後ろで本を読むフランチェスコ派の修道僧、手を合わせる従者、そして、剣を杖にした馬丁の姿。このお方はこの絵を描いた御本人であるアングルだそうだ。自らもこの輝かしき祭儀に参列したかったのであろう。

しかし、この戴冠式から1年も経たないうちにジャンヌは捕らえられ裁判にかけられる。そして火刑台へ...。ジャンヌの鎧の前の銘文板には「その火刑台は、天上の王座と変わった」と書かれているという。当時、まだ”魔女”という概念よりも”異端者”としてジャンヌは刑に処された。当時は土葬が通常の時代に火刑、そしてその灰は土に返ることも許されずにセーヌ川に撒かれたという苛酷な最期。しかし、1900年代になり、ジャンヌ・ダルクは”聖人”とされた...純粋で勇敢な少女はイギリスまでも救ったとも言われるに今は至る。異端者としてのジャンヌは当時女性が男装することは禁じられていた。けれど、その処刑には野望を打ち砕かれた王妃イザボーがイギリスの摂政ベッドフォード公にジャンヌの処刑の要請を手紙にしてまで送っていたという。ルーアンの広場で20歳にもならない少女ジャンヌの命は苦しい火炎の中で燃え尽きてしまったのである。
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by claranomori | 2009-06-09 11:27 | 少女イコン・不滅の少女