1981年のロバート・マーコウィッツ監督映画『ロングウェイ・ホーム』。この映画は当初はテレビ用に作られたものだそうだ。私は90年代になってから観たもので、既に主人公のドナルド(10代後半から青年期)を演じるこの映画の主役であるティモシー・ハットンは有名だし知ってはいた。けれど、この映画を観て好感を持てるようになったので思い出深いもの。この映画は”少年映画”とも云えるけれど、兄弟妹の離れても心の繋がりは断ち切ることはできないのだという”家族”という絆の尊さを奇を衒うことなく描いている秀作に思う。当時の私はこのような作風を優先して観ることはなかった(最初はロザンナ・アークエットをお目当てに観たのだから)。けれど、感動して号泣した。今感じるのは”アメリカの一風景”であるということに何か向かうものもある。このお話は実話に基づいたものだそうだし、このような子供たちが普通に暮らしているという現代アメリカという大国。そんなお話を新聞で読んで知るよりもずっとリアルに響くのはやはり映画な私。
長男のドナルド7歳、次男のデヴィッド4歳、末っ子の妹キャロライン3歳という実の兄弟妹。娼婦の母親と職の定まらない父親に捨てられてから幼い3人だけとなる。そんな状況下に置かれた幼い子供たち。けれど、長男のドナルドはその日から弟妹の兄でありながら父親の役も担うことになる。どこから調達してくるのかコーンフレークやミルクなどの食料を分け与える。けれど、そんな彼らは施設に送られ里親の家へと離れ離れとなる。ドナルドはひと時も弟と妹のことを忘れることはなかった。擁護施設のカウンセラーの女性リリアン(ブレンダ・ヴァッカロ)にドナルドはしつこく彼等の居場所を尋ねるのだけれど、規則故に18歳になるまでは教えてもらえない。ドナルドは自分が18歳になる日をまだかまだかと待ちわびる。高校生のドナルドは美しい少女ローズ(ロザンナ・アークエット)と出会い、二人は卒業して結婚する。大切な妻との生活の中でもやはり弟と妹に再会できる日を願い続けていた。リリアンの尽力もあり先ず弟デヴィッドと再会。お互い成長した姿で兄弟なのにぎこちない様子に私は胸が熱くなるのだった。そして、名場面のひとつかな。幼い時、僅かな食料しかない日々。冷蔵庫のミルクをデヴィッドが勝手に全部飲んでしまった。再会した今、デヴィッドが飲み干す姿を見つめてあの日がオーバーラップするドナルドの心。妹キャロラインとは最後の最後でようやく再会!3人が時を経てまた抱き合うシーンをローズも優しく見つめている。決して大味ではないと思う。製作者であるリンダ・オットーはカウンセラー経験のあるお方で、リリアンの役どころにかなり彼女の視点を重ねることに成功しているようにも思う。私は女性なので、どうしても女性の目、視線を強く感じる傾向が過敏になって来ているようだ。女性だからすべて好きな描き方とも限らないけれど。ドナルドの子供時代を演じているのはウィル・ウィートン!後にリヴァー・フェニックスたちとの『スタンド・バイ・ミー』でさらに有名になったけれど、この『ロングウェイ・ホーム』(映画デビュー作のようだ)でも存在感を残しているので素晴らしい。親に捨てられバラバラになった兄弟姉妹たちは多い。それら皆がこのように再会できることは多くはないだろう。これは映画ながら現実の生活の中で見られることなのだ。里親が新たな家となる。そこで成長してゆく。けれど、”心の家”はただ一つ。あの汚れた顔の幼い子供たちの精一杯のコーンフレークとガランとしたテーブルが深く焼き付いている。きっと今もそんな子供たちが世界中にいる。それでも生きる子供たちに光をと願う☆
ロングウェイ・ホーム/A LONG WAY HOME
1981年・アメリカ映画
監督:ロバート・マーコウィッツ 製作:リンダ・オットー、アラン・ランズバーグ 撮影:ドン・バーンクラント 出演:ティモシー・ハットン、ブレンダ・ヴァッカロ、ロザンナ・アークエット、ポール・レジナ、ウィル・ウィートン、ジョン・レーン、ボニー・バートレット、セヴン・アン・マクドナルド