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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『ベリッシマ』 少女マリア(ティーナ・アピチッラ)と母マッダレーナ(アンナ・マニャーニ)♪

『ベリッシマ』 少女マリア(ティーナ・アピチッラ)と母マッダレーナ(アンナ・マニャーニ)♪_b0106921_1463233.jpg
ルキノ・ヴィスコンティ監督の1951年映画『ベリッシマ』。この映画は80年代に劇場で観たのが最初。そして、イタリアの名女優アンナ・マニャーニ出演作としても初めて観たもの。先ず、ヴィスコンティが大好きなので他の作品のこともと思いながらも好き過ぎて纏まらない...でも、思いつくままに。記しておくと便利なので(頭の整頓に)いつもより細かくスタッフ名を挙げておこう。これがまた、私の好きな美が繋がってゆくのだと再確認。

ラジオで”六歳から八歳までの女の子を一名募集”という知らせ。チネチッタ撮影所内のステラ社の最新作『今日と明日と別の日』の「ベリッシマ(美少女)・コンクール」の特設看板も掲げられている。翌日、わが娘を未来のスターにと夢見て多くの親子連れが集まっている。マッダレーナ(アンナ・マニャーニ)も娘マリア(ティーナ・アピチッラ)に夢を馳せて会場にやって来たのだけれど、肝心のマリアがいない。もうコンクールは始まっている。マリアはプールの傍で泣いている。受付に間に合わないのでマッダレーナはマリアをぶってしまう。しかし、親切な青年アルベルト(ワルター・キアーリ)が現れ一次選考を通過して気をよくするマッダレーナ。この青年は関係者でもあった。二次選考に向けてマリアは、元女優の下で演技指導を受けたりという日々が始まる。お洋服を購入したりとマッダレーナは楽しいのだ。夫は反対しているので口論もあるけれど、マッダレーナは映画が大好きな方(劇中、バート・ランカスターやモンゴメリー・クリフトの映画が流れる)。”バート・ランカスターの声って素敵だわ”と言ったりして愉快(バート・ランカスターは後にヴィスコンティ映画に欠かせないお方ともなる)。マリアなのだけれど、本人はあまり楽しくもない(多分5歳で幼いうえに大人しい少女)。ケーキのロウソクも上手く消せず、二次選考では泣いてしまった。そして、決定選考試写の日、居ても立ってもおられずマッダレーナは強引に試写の様子を覗う。マリアの泣きじゃくるフィルムを観て大笑いする製作関係者たち。監督(アレッサンドロ・ブラゼッティ監督が実名で出演)だけはマリアに関心を抱いていた。マッダレーナは泣くだけの娘のフィルムを見て呆れるものの、大笑いしている人達が腹立たしくなってくる。遂にはその部屋まで入ってゆくのだ。我が娘が笑い者にされ喜ぶ親はいないだろう!監督はマリアを気に入っていたので製作者たちは先回りして契約書を持って家にやって来ていた。けれど、バスを待つ帰り道、マッダレーナはマリアにとって良いことではないのだと儚き夢が消え去るのだった。そして、そんな契約書などもう要らないのだと夫に彼等を追い返してもらう。人情喜劇でもある素晴らしさ!
『ベリッシマ』 少女マリア(ティーナ・アピチッラ)と母マッダレーナ(アンナ・マニャーニ)♪_b0106921_345321.jpg
この『ベリッシマ』はもう兎に角、このアンナ・マニャーニの魅力全開!天晴れである。デカダンの巨匠ヴィスコンティはこの時期はネオ・レアリスモ(ネオ・リアリズム)。下町の人々の生活や表情が生き生きと描き出されている。”ヴィスコンティは貴族なので一般庶民の生活など分かりはしない”と言われたことがある。けれど、ヴィスコンティは”赤い貴族”とも呼ばれたお方!大好きなので讃えることしか出来ないけれど、『ベニスに死す』や『ルートヴィヒ』だけが名作ではない!私はヴィスコンティから今なお多くのことを学んでいる過程。『若者のすべて ロッコと兄弟たち』を観て心が張り裂けそうだったのだ。何も知らない10代の私の心が、これ程映像を観て衝撃を受けたのはデヴィッド・ボウイのライヴ映像以来のことだった(その前の衝撃は『愛の嵐』)。後に『揺れる大地』を観て心揺さぶられた!今だと、貴族であるヴィスコンティならではの表現世界があるのだろうと思える。常に徹底しているし役者の選択も見事すぎる。”美学者”として私は敬愛しているお方でもある。監督の言葉(ヴィスコンティ語録)が好き。そんなお言葉のひとつを☆

下級階層にあり、娘を女優に仕立てあげようと夢に見る女を、マニャーニはある人間的な豊かさをもって演じてくれた。この庶民的な母親の顔が自由に生き生きとしていたのは、まったくマニャーニのおかげである。私は俳優の個性をそのまま生かしながら登場人物を描き、掘り下げていく。マニャーニはそういう私にうまく応えてくれる女優である。

ベリッシマ/BELLISSIMA
 1951年・イタリア映画
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 助監督:フランチェスコ・ロージ、フランコ・ゼフィレッリ 製作:サルヴォ・ダンジェロ 原作:チェザーレ・ザヴァッティーニ 脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ、フランチェスコ・ロージ、ルキノ・ヴィスコンティ 撮影:ピエロ・ポルタルーピ、ポール・ロナルド 衣装デザイン:ピエロ・トージ 音楽:フランコ・マンニーノ 出演:アンナ・マニャーニ、ティーナ・アピチッラ、ワルター・キアーリ、アレッサンドロ・ブラゼッティ
by claranomori | 2009-04-05 03:17 | ♥ルキノ・ヴィスコンティ