★メレット・ベッカー:MERET BECKER 『ロリータ』 驚異のアルバム『夢魔』より★
2009年 04月 01日
あそこに居るのは去年のロリータ
もうすぐ彼女も
ただの無邪気な女
そうなればもう
ロリータとは呼べない
ロリータはいつでも余計な知恵がついていて
本心以上のことをやってしまう
ロリータは正真正銘のあばずれ
メイクなしで軽くパウダーをはたいたあばずれ
まず微笑んで、ふてくされて
その後で意味ありげな視線を送る
そして急に激しく泣きじゃくって
小さな脚を乱暴にばたつかせる
でもこの脚に腰がつくと
ロリータはただの無邪気な女になる
「ルル」の愛称を持つ無邪気な女は
女だけど、まだヴァージン
ルルは口をとがらして
子供っぽさを失ってはいけない
そうしないと すぐに
オバアチャンになってしまう
シワだらけになって 誰にも振りかえられなくなって
精神的な価値を失ってしまう
みんなが ディーヴァやファム・ファタルになれるわけじゃないし
極めて平凡な年寄りになってしまう娘が多いから
『ロリータ』 対訳:岡本和子
★メレット・ベッカーはドイツの女優であり歌手でもある。この『夢魔』はセカンド・アルバムで日本盤はこの作品しか発売されていない。私は「アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン」や「ニック・ケイヴ」人脈にとても興味を持ち続けている中で知ったお方。二ナ・ハーゲンとの親交もあるお方。メレット・ベッカーのこのアルバムが彼女の世界だと思うと物足らない。映画を観ても、他の作品でも、この『夢魔』の中でさえ、様々なお顔を見せてくださる。これぞ!表現者的なるもの。私の好きなヴォーカリストには”表現者”という言葉の似合う方々が結構多い。ノイバウテンのメンバーでもあるアレクサンダー・ハッケ(アレックス)はメレット・ベッカーのご主人で、このアルバムのプロデュースを始め、不気味なメルヘン世界、ノイズ・コラージュやギター、ヴォーカル参加と欠かせない存在。解説には書かれていないけれど、ドイツの名優でメレット・ベッカーの父親でもあるオットー・ザンダーのヴォイスがアルバムの中で聴けるのも個人的に嬉しい発見でもあった。ノイバウテンとルイス・キャロルの融合する世界・・・正に”夢魔”★私の好きな歌姫。少しブリジット・フォンテーヌ、少しダグマー・クラウゼ、そしてロッテ・レーニャ、ワイマール時代のドイツ...マレーネ・ディートリッヒのお姿も連鎖する♪