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あまりにも私的な少女幻想、あるいは束の間の光の雫。少女少年・映画・音楽・文学・絵画・神話・妖精たちとの美しきロマンの旅路♪


by chouchou
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『居酒屋』 ジェルヴェーズ(名女優★マリア・シェル) 原作:エミール・ゾラ 監督:ルネ・クレマン

『居酒屋』 ジェルヴェーズ(名女優★マリア・シェル) 原作:エミール・ゾラ 監督:ルネ・クレマン_b0106921_23351195.gif
エミール・ゾラ(Emile Zola:1840年~1902年)は自然主義文学の代表的なお方。1871年から実証的実験手法を小説に取り入れた『ルーゴン・マッカール叢書』を発表し始める。けれど、当初の予定の10巻は、書き進むにつれ全20巻となり、費やした年月は20年以上。この大叢書の副題は「第二帝政下における一家族の自然的、社会的歴史」。私は映画をあれこれと観ているうちに知らず知らずにエミール・ゾラというフランス文学の作品に出会うことになった。やはり代表作『居酒屋』は今でも原作も映画も好きなもの。ゾラの『居酒屋』の原題は『L'ASSOMMOIR』。映画の方は、健気ながら転落の末路に向う主人公の女性の名ジェルヴェーズ『GERVAISE』となっている。”ASSOMMOIR”とは元来は人や動物を叩きつける棍棒の意味を持ち、それが転じて、きつい安酒で人を泥酔させる酒場を意味するのだそうだ(1992年頃、今と違って時間があったので通信教育でフランス文学を受講していたことがある。その時に教えて頂いた)。

マリア・シェルを初めて知った映画はこの『居酒屋』が先か『女の一生』が先だったのか...よく覚えていないけれど似た時期に知り得たことを幸運に思う。そして、ルキノ・ヴィスコンティの『白夜』、デヴィッド・ボウイのお母様役の『ジャスト・ア・ジゴロ』はシドニー・ローム(アラン・ドロンとの共演作『個人生活』で知った女優さま)、キム・ノヴァク、マレーネ・ディートリッヒとの共演作。弟のマクシミリアン・シェルと共演した『オデッサ・ファイル』、ドストエフスキーの『カラマゾフの兄弟』、ロミー・シュナイダー、ミシェル・ピコリ、マチュー・カリエール、ヘルムート・グリーム達との『サン・スーシの女』、超豪華オールキャストでの『さすらいの航海』...マリア・シェルは年老いても脇役でも、ヨーロッパ映画でもハリウッド映画でも、マリア・シェルのシーンを刻んだお方だと思っている。美しく演技力もある本物のアクトレス。美しい容姿だけではなく、あのブルー・グリーンな瞳や表情豊かな演技に魅了されてきたように思う。それにしても、お若い頃の主演作、代表作にはなんと耐える健気な女性を数多く演じているのだろう!どんな境遇でも哀しみと希望をも忘れないあの笑顔は美しすぎる。ところが、『居酒屋』のラストは目も虚ろな酒浸りのジェルヴェーズの姿が残る。ここでは、もう希望はない。でも、少し大きくなった娘ナナはリボンを首元に付け颯爽と男の子たちのもとに駆けてゆく...『ナナ』(『女優ナナ』や『娼婦ナナ』)へと続くことを示唆している。この少女は『シベールの日曜日』名子役☆パトリシア・ゴッジの実の姉のシャンタル・ゴッジ。また、長男のエチエンヌは後に『ジェルミナール』の炭坑労働者の物語の主人公として登場する。その他ゾラの原作が映画化されたものを幾つか観ているのだけれど、やはり『居酒屋』が強烈に残っているしまた観たいとも想う。

この映画『居酒屋』の監督はルネ・クレマン。徹底したリアリズムというのだろうか、細かい部分まで当時の労働者階級の人々の生活を表現しているのだと思う。マリア・シェルはどう考えてもとんでもなく素晴らしい!映画の中で食卓でのお食事の場面などが好きなようで、よく観た後、お腹が空いた気がして同じものを食べたくなったりする。ここでも、晩餐会のシーンは秀逸で、がちょうのお肉を食べるシーンがあるのだけれど、それぞれ食べ方が違う。滅多に食べることのできないご馳走なのだ。晩餐会の主役であるジェルヴェーズは笑顔でそのお肉を貪るように食べる...生き生きと伝わるものがある。ナイフとフォークもテーブルにはあるけれど使わない。自然主義文学の原作を見事に映像化した名作。いつまでも心に残る映画☆

居酒屋:GERVAISE
1956年・フランス映画
監督:ルネ・クレマン 原作:エミール・ゾラ 撮影:ロベール・ジュイヤール 音楽:ジョルジュ・オーリック 出演:マリア・シェル、フランソワ・ペリエ、アルマン・メストラル、ジャック・アルダン、シュジー・ドレール、ジャニー・オルト、シャンタル・ゴッジ

※私は映画が大好きで一日中でも観ていられるくらい(時間がないけれど)。歳を重ねるうちに観る映画の幅も狭いながらも広がっているよう。でも、やはり基本的に好きな世界、優先順位は変わりはしない。少女や少年映画は勿論なのだけれど、文学が好きなのでどうしても原作も気になってしまったり、逆に映画化が気になってしまう。その上、演劇・戯曲も好きなので歴史劇や時代劇も大好き!所謂”古典”的な世界。基本的に原作も映画も読み観たもので好きな作品をこのカテゴリに入れてゆきたいと思います。時代を超えて浮遊する心のときめき☆そんな思いを抱くことができる私はしあわせだと思います。でも、現実逃避でもないのでバランスは時に崩れてしまいますが、これまで生きてきた私の心の源泉はやはり”美”を感じる世界のようです☆
by claranomori | 2009-02-11 01:50 | 文学と映画★文芸・史劇