竹久夢二 短章集 『女体素描』より 画 『黒船屋』
2009年 02月 02日
★美といふものは意識することである。苦痛にも、災害にも、宿命にも、美とは快感のことだ。
★恋人達は、美しいところだけを見せ合って満足する。
夫婦はまた、悪いところばかり見せ合ふものだ。たまにやさしく呼びかけたい気持ちになつても、言葉にするのは嘘らしくて、つひ言はずにしまふ。どこまでいつても満足しない。永遠の平行線。
★「女は眼に見得るものしか愛しない」
さういふ独断的な言ひ方は許されないが、それを言つた人について考へる時、はじめてその言葉には深い味がある。
★憧憬なんて言葉は、今時の活字にはなくなつたやうだが、ふと近代辞典を見たら、ソフトフォーカスの美人写真のごときもの、とあつた。
★年をとるに随つて、過去のことばかり語るやうになるものだ。現在に語ることがないのではない、現在の事に感銘がうすくなつて来るのだ。
※竹久夢二は画家(童画や夢二式美人画と呼ばれるものもある)であり、作家・詩人でもあり、雑貨店を営んだお方でもある。大正ロマンの香しき風情はあらゆる作品の中にある。この晩年の短章集には未発表のデッサン(挿絵)が多数掲載されてもいる。数々の女性観を読むことができ興味深い御本。その中のほんの一部ながら。上の絵は有名な『黒船屋』(1919年・大正9年)で、夢二の生涯、作品に欠かせない存在であった女性”お葉”がモデルの物憂げな美しい画♪